最近の海洋熱波・寒波(2023/12) 記録的な高水温続く

最近の水温の状況

最近の日本周辺の海面の水温の状況を見てみます。

図1は、先月11月21日と今月12月15日の海面の水温の平年との差を見たものです[1] 。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。図2は、同じく水深100mの図です。水深100mでも海面と同じ変化が見られれば、水温の平年との差が天気だけでなく海流の影響を受けている可能性が高くなります。

今月は先月に引き続き日本周辺の海面で多くの海域が平年より高い水温になっています。

特に黒潮続流が極端に北上している南東北太平洋沖は平年よりかなり高い水温になっています(黒潮続流の北上が続く(親潮ウォッチ2023/12)参照)。沖合の暖水渦でも平年よりかなり高い水温です。

日本海でも高い水温が続いています。気象庁の3か月予報では日本海側では雪が少ないことが予測されていますが、日本海の水温が高いので、ドカ雪がふる可能性があることには注意が必要かもしれません(対馬暖流が強く大雪?参照)。

東シナ海では暖冬を反映して、先月よりも平年との差が拡大しています。

水温が平年より低い例外としては黒潮大蛇行による冷水渦のある紀伊半島南の海域があります。また暖水渦と黒潮続流に挟まれた海域に親潮が流れ込んでいる北海道南沖では例年より水温が低い海域もみられます(上記親潮ウォッチ参照)。

今後の日本周辺の水温については、「季節ウォッチ」も参考にしてください。

気象庁は、日本の平均気温及び日本近海の平均海面水温で高温の状態が続いており、2023年の秋(9~11月)はいずれも、この季節として過去の記録を大きく上回る第1位の高温となっていることを発表しています[2]

 

Fig1

図1: 海面の温度の平年との差(℃)。[上段]2023年11月21日。 [下段] 2023年12月15日。

Fig2

図2: 図1に同じ、ただし水深100m。

 

海洋熱波・海洋寒波

海洋熱波とは、数日以上極端に海水温が上昇する現象です。その発生頻度は近年に大幅に増加しており、海洋生態系に与える影響が危惧されています([プレスリリース] 北海道・東北沖で海洋熱波が頻発していることが明らかに)。

図3は、海洋熱波でよく用いられている基準[3]を使って日本周辺の海面での海洋熱波・寒波の発生状況を見たものです。同じく、図4は水深100mでの海洋熱波・寒波の発生状況です。

数字が1以上になっている所が統計的に10%以下しか発生しない高い温度である海洋熱波が発生している所です。数字が大きいほど強い海洋熱波であることをしめしています。図1,2(b)が平年よりどれだけ水温が高いのかを温度差でしめしているのに対し、図3,4はその中でもまれな温度変化をしめしています。

海面(図3)でも水深100mでも、目立つ海洋熱波は東北沖太平洋沖、日本海、東海沿岸です、東シナ海です。特に黒潮続流の影響を受けている東北沖太平洋沖はレベル3「厳しい」以上の海洋熱波が見られます。日本海でもレベル3以上の海洋熱波が見られます。

日本黒潮大蛇行の冷水渦では海面でレベル1の海洋寒波、水深100mではレベル4(極端)の海洋寒波になっています。

Fig3

図3: 2023年11月21日における日本周辺水深1mの海洋熱波と海洋寒波の発生状況。

 

Fig4

図4: 図3に同じ、ただし水深100m。

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2020年の平均を使っています。JCOPE2M再解析データは学術研究利用では無償で公開しています。
  2. [2]秋の日本の平均気温と日本近海の平均海面水温の記録的な高温について~平均気温は3季節連続、平均海面水温は2季節連続で記録更新~」 (気象庁, 2023/12/1)
  3. [3]JCOPE2Mの1993~2020年のデータを使い、統計的に10%以下(90パーセンタイル)の高温が5日以上続いた場合に海洋熱波としています。平年との差が海洋熱波の基準(90%タイルと気候平均の差)の2倍以上である場合は2,3倍以上である場合は3とカテゴリー化しています。逆に統計的に10%以下(10パーセンタイル)の低温が5日以上続いた場合には海洋寒波としています。