見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で2月13日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。
黒潮続流(A)が例年に比べて異常に北上しており東北沖は水温が高くなっています。また北海道南東方沖には暖水渦(B)が存在します。その合間をぬって、親潮が南下しています。通常、黒潮と親潮の間には黒潮と親潮の混ざった水の領域があって、黒潮と親潮の流れが直接接することは少ないですが(図5参照)、今は接しています(図6参照)。
水温5度線(赤線)は平年(青線)より広がっており、平年より水温が高くなっています。気象庁が診断している親潮の面積も平年より小さくなっています。
黒潮続流の北上(A)の南は流れとしてくびれており、渦としてちぎれそうな形をしています。しかし、今後の予測(図2~3)は、渦がちぎれそうで、ちぎれずに続くという予測になっています。
日本海では水温が高く、北海道北部で水温5度線の分布が平年よりも広がっており、それが続く予測です(C)。気象庁の対馬暖流の勢力の時系列(日本海における深さ 100m の水温が 10℃以上の領域の面積)も、平年よりかなり高くなっています。
図4は2024年2月13日から4月23日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 図1に対応する2024年2月13日から4月23日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
今月のハイライト: 黒潮と親潮の位置
JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (解説は「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。
図5と6は、昨年2月19日と今年2月19日の「ひまわり」観測の海面水温とモデルによる流れの推定値です。
昨年は(図5) 、黒潮(A)と親潮(B)の流れは直接は接しておらず、中間に黒潮から渦がちぎれて親潮の水と混じり合う混合域と呼ばれる中間の海域がありました。
今年は(図6) 、昨年よりも黒潮(A)が北上しています。一方で、黒潮の北上は安定していて、そこから渦がちぎれることもなく、親潮の南下がさまたげられていません。そのため、親潮は昨年よりも南下しています(B)。そのため、黒潮と親潮が直接接するような形になっています。
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。
- [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。↩