暖水渦の行方(親潮ウォッチ2024/6)

見通し(長期予測)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で6月112日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。

黒潮続流(A)が例年に比べて異常に北上しており東北沖は水温が高い状態が続いてきましたが、先月その北端から渦がちぎれました(「黒潮続流の北端から渦がちぎれた(親潮ウォッチ2024/5)」参照)。現在は黒潮続流(A)と暖水渦(B)が分離された状態です(図5,6も参照)。

その渦(B)が暖水渦として東北沖にあるため、親潮の南下は制限されそうです(図2~3) 。他の渦の影響もあります(C)。一方、渦がちぎれたことで、黒潮続流の北上は小さくなると予測されています(A)。ただ暖水渦が3つにわかれ(B1,B2,B3)、渦の一つ(B3)が黒潮続流にくっつく可能性もあると予測されていることから、複雑な動きになるかもしれません。渦の長期予測は難しいので、最新の短期予測も参照してください。

水温5度線(赤線)は平年(青線)より広がっており、平年より水温が高いことをしめしています。気象庁が診断している親潮の面積も平年より小さくなっています。

日本海では水温が高く、北海道北部で水温5度線の分布が平年よりも広がっており、それが続く予測です(C)。一方、気象庁の対馬暖流の勢力の時系列(日本海における深さ 100m の水温が 10℃以上の領域の面積)は平年に近づいています。

図4は2024年6月12日から8月21日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: JCOPE2Mによる2024年6月12日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い赤線を引いた。青線は1993-2020年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2024年7月21日の予測。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2024年8月21日の予測。

 


図4: 図1に対応する2024年6月12日から8月21日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

今月のハイライト: 暖水渦による水温とクロロフィルa

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (解説は「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。

図5は6月17日の人工衛星「ひまわり」による海面水温の観測値です。水温の高い位置で黒潮続流(A)と暖水渦(B)の存在が分かります。

図6は対応する人工衛星「ひまわり」によるクロロフィルa(プランクトン量の指標)の観測値です。暖水渦がプランクトンに必要な栄養塩が下からわきあがるのを抑えることから、暖水渦の位置ではクロロフィルaが少なくなっています。

Fig5

図5:2024年6月17日一日平均の人工衛星「ひまわり」海面水温観測(色, ①で指定)。色の幅は-2~31℃とした(②で指定)。

 

Fig5

図6:2024年6月17日一日平均の人工衛星「ひまわり」クロロフィルa観測(色, ①で指定)。色の幅は0.01~100mg/m3とした(②で指定)。

 

短期予測

長期予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)による20日予測のアニメーションを、先週からYouTubeに1週間に一度の間隔で掲載しています。親潮ウォッチの更新は月に一回ですが、一週間に一度の予測のアニメーションも参考にしてください。

 


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

  1. [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。