2015年12月19日から2016年1月23日の予測を検証します

毎月月末は過去1ヶ月の予測を検証する予定です。今回は2015年12月25日号の、2015年12月19日から2016年1月23日までの予測を検証します。

図1上段は、2015年12月19日から予測した2016年1月23日の黒潮の状態です。2015年12月25日号の予測では、1月は離岸流路が続き、2月には接岸流路に向かう可能性があるとしていました。その予測は大筋としては悪くありませんでしたが、観測値を取り入れて実際に近いJCOPEの解析値(図1下段)と比べると、離岸傾向bの位置をうまく予測できていませんでした。そのため、1月23日の段階で、予測では黒潮が八丈島の南を通る離岸流路がまだ続いているのに対し、実際には今週号で述べた通り、八丈島の北を流れる接岸流路が始まりつつあります(※1)。

その他の点では、2015年12月25日号の予測(図1上段)は概ね実際(図1下段)と合っていました。特に、離岸傾向fのため九州東岸から四国・足摺岬で大きく黒潮が離岸に向かうことを良く予測できていました。

図2は2015年12月19日から2016年1月23日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。

図1: [上段]2016年12月19日から予測した2016年1月23日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した2016年1月23日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤★は八丈島の位置。アルファベットa,b,..は接岸・離岸傾向の波(今週号の現状・予測参照)。アルファベットは新年にあたり、あらためてaから記号を振りなおしたものを採用(2016年1月8日号参照)。

 


図2: 2015年12月19日から2016年1月23日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。

kurokatsu

 

2015年12月25日号の予測では、「1月から2月にかけて接岸・離岸の変動が大きくなり、その変動が黒潮の下流に移動する」と予測していました。これを観測で確かめて見ましょう。図3は、四国・足摺岬沖に位置する黒潮牧場13号ブイ(図左)と、四国・室戸岬沖に位置する10号ブイ(図右)で測られた海面近くの海流の1日毎の時間変化です(※2)。縦軸が日付になっており、矢印は、方向が流れの向き、長さが流れの強さになっています。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向きを意味しています。黒潮が接岸し近づくと流速が大きくなり、黒潮が離岸し遠ざかると流速が小さくなります。接岸・離岸の変化は上流から下流に移動する性質があるので、流速の増減も上流(足摺岬沖・13号ブイ)から下流(室戸岬沖・10号ブイ)の順に変化します。

残念ながら足摺岬沖の13号ブイ(図3左)は、2015年12月1日以前、2016年1月21日以後にデータが得られていないので変化がはっきりしませんが、室戸岬沖の10号ブイの流速を見ると(図3右)、12月後半から1月前半にかけて離岸傾向dのため黒潮が岸から離れ流速が小さめでしたが、接岸傾向eの上流から移動により1月19日をピークとして流速が急に大きくなり、次に離岸傾向fの移動により急に小さくなるという大きな変化をしています(※3)。

今週号で見たように、離岸傾向fは特に大きな離岸を引き起こすと予測されているので、今後に注目です。

図3: 足摺岬沖黒潮牧場13号(左)と10号ブイ(右)で観測された表層流速の1日毎の時間変化(2015年7月30日から2015年9月16日)。単位はノット。矢印は、方向が流れの向き、長さが流れの強さ。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向き、青で塗っているのが西向き。黒潮牧場13号ブイでは9月13日以降、流速データが欠測。データは高知県漁海況情報システムから入手した。

図3: 足摺岬沖黒潮牧場13号(左)と10号ブイ(右)で観測された表層流速の1日毎の時間変化(2015年12月1日から2016年12月28日)。単位はノット。矢印は、方向が流れの向き、長さが流れの強さ。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向き。黒潮牧場13号ブイでは2015年12月1日以前、2016年1月21日以後、流速データが欠測。データは高知県漁海況情報システムから入手した。


※1
詳細は省きますが、昨年末に次世代型の予測モデルの実験を行っており、その過程で予測モデルの調整を行ったのがあまりうまくいかなかったようです。新年に入り再び調整を行ったので、1月8日号からは1月末に接岸流路に向かうことを予測できています。

※2
2016年9月18日号「宇和海で急潮発生?」等、過去の解説でも黒潮牧場ブイのデータを使用しています。一覧はこちら

※3
離岸傾向d
,接岸傾向e,離岸傾向fは、2015年12月25日号離岸傾向l,接岸傾向m,離岸傾向nと呼んでいたものに対応します。