「ちきゅう」の観測が始まりました(※1)。「ちきゅう」から海流の観測データが送られてきたので、今回はそのデータを見てみましょう。
図1の色は、気象衛星「ひまわり8号」からJAXAが作成した3月30日の海面水温の分布です(※2)。水温が高くなっている帯が黒潮が流れている所です。連載第4回で見たように、「ちきゅう」の掘削地点は黒潮上にあるとみられます。
3月30日の午前0時から3月31日の午前9時にかけて、「ちきゅう」は図の黒線のように、北東から掘削地点に近づき、その後、北西に離れました。このように近づいたり、離れたりするのは、掘削
図2は、この時の「ちきゅう」の緯度位置(図2上段)と、「ちきゅう」で観測された海流の流速(図2下段)の時間変化です。3月30日の午前0時から午前3時過ぎにかけて掘削地点の緯度に近づくにつれて(図2上段)、観測される海流の流速は急激に大きくなり(図2下段)、掘削地点緯度では約4ノットの大きな流速が続きました。3月末には「ちきゅう」の掘削地点は黒潮上にあり、4ノット近い流速になるだろうという連載第3回に紹介した予測は当たっていました。
その後、3月30日18時過ぎから「ちきゅう」が北上するにつれて(図2上段)、黒潮から離れ、流速は小さくなっています(図2下段)。
今回の航海では、「ちきゅう」を支援するための船「あかつき」も観測に参加しています。「あかつき」は、3月30日の午前0時から3月31日の午前9時にかけて、図3の黒線のように、「ちきゅう」掘削地点を中心に、黒潮を横切るように南北に移動しています。
図4は、「あかつき」の緯度位置と、「あかつき」で観測された海流の流速の関係を見た図です。「あかつき」が南北に移動した時、「ちきゅう」掘削地点緯度付近に近づいた時に流速がもっとも大きくなっています。つまり、現在、「ちきゅう」掘削地点は、黒潮のど真ん中の、もっとも流速が強い場所にあることがわかります。
※1
「ちきゅう」の観測の様子については、twitterを参照。
※2
「ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。
「ちきゅう」のための海流予測の連載記事一覧はこちら。
この連載では、流れの速さの単位として船舶でよく使われるノット(2ノットは約1メートル毎秒)を使用します。
「ちきゅう」のための海流予測KFSJの特別サイトはhttps://www.jamstec.go.jp/jcope/kfsj/です。KFSJついては連載第2回で紹介しました。
「ちきゅう」の観測の様子に関しては「ちきゅう」公式twitterを参照。