黒潮は大きく蛇行した後、八丈島東を北上しています。小蛇行により九州東岸から四国で離岸しています。八丈島の南を流れる離岸はが次第に縮小するでしょう。小蛇行がしだいに東に移動し、潮岬沖で離岸が始まると予測しています。 |
JCOPE2の改良版であるJCOPE2Mは週2回の予測を行っています。ここでは2017年7月28日から9月28日の予測を解説します。
現状
図1と図2はJCOPE2Mで計算した7月28日と8月2日の黒潮の状態です。
黒潮は、大きな蛇行が発達しています(図1,2、離岸傾向v[1])(図1,2)。黒潮は八丈島の南を通った後、八丈島東を北上しています(図1,2)。房総半島沖では離岸傾向tのために黒潮がやや離れています。
東海沖には暖水渦があり、黒潮から暖かい水が入りやすくなっています(接岸傾向α)。
九州東岸から四国にかけて大きめの離岸(小蛇行2[2]、離岸傾向x)が存在しています。四国・足摺岬と室戸岬でも離岸しています(図2)。潮岬では接岸していますが(接岸傾向w)、小蛇行2が近づいています。
予測
図3・図4・図5・図6は8月9日・8月16日・8月30日・9月28日の予測です。
東海沖の蛇行(離岸傾向v)は、しだいに規模が小さくなり、消えそうです(図3~4)。
九州東岸の小蛇行(小蛇行2)が黒潮下流(東)へ移動すると予測しています(図3~5)。小蛇行が通過する沿岸では流速の変動が大きくなります。紀伊半島・潮岬では離岸が始まると予測しています。逆に九州東岸や四国・足摺岬では接岸していきます。長期的には、小蛇行2が次の大きな蛇行につながる可能性があります(図6)。
図7は、7月28日から9月28日までの予測をアニメーションにしたものです。
図7: 2017年7月28日から9月28日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮の蛇行はどうなるか?
この欄では黒潮蛇行の発達の様子を検証していきます。注目ポイントは、1.蛇行はどこまで大きくなるか?、2.蛇行がどこに位置するか?、3.次の蛇行(小蛇行2)がいつ来るか?の3つです。
まず、蛇行の大きさと位置ですが、大きな蛇行が縮小を始めています。図8は7月27日と7月31日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[3]。7月27日には温度が低いところが南に広がり(黄色矢印)、黒潮(温度の高い帯)は北緯32度(赤点線)のさらに南を蛇行していました。黒潮が北緯32度以南まで蛇行すると大きいという目安になりますので[4]、大きな蛇行です。ただ、7月31日には冷たい水の南への広がりが小さくなっており、蛇行は縮小しているようです。予測では、この蛇行は次第に消えていくと予測しています(図3~4)。
九州東から四国沖に存在している小蛇行2が次の注目点です。この小蛇行が黒潮下流(東)に移動してきて、別の大きな蛇行に発展する可能性があります[5]。小蛇行は紀伊半島・潮岬のすぐ近くまで来ており、紀伊半島沖での大きな離岸が始まると予測しています(図3~5)。
- [1]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字u,w,,が接岸傾向で、青字v,x,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、例えば離岸傾向xが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。↩
- [2]現在の東海沖の離岸の元となった小蛇行と区別するために小蛇行2と呼んでいます。↩
- [3]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。鹿児島県水産技術開発センターや和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。↩
- [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [5]2013年にも、2回蛇行が大きく発達して、2回目の蛇行は黒潮大蛇行の発生か?ということがありました。2013年の蛇行に関しては、2017/7/5号”2013年の「黒潮大蛇行」?”で解説しています。↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。