JCOPEは、先週まで八丈島に近づいていた黒潮が、ふたたび南下し、離岸が大きくなっていると分析しています。このことを観測から確かめてみましょう。3月20日号の解説で、黒潮が八丈島の北を流れているか南を流れているかは、八丈島での海面高度を見れば良いことを説明しました。それは、流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1)。このため、黒潮が本州に近づいて八丈島の北を流れれば、八丈島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路が発達すれば、八丈島周辺の海面高度は低くなります。
では、観測を見てみましょう。図2は、3月20日号に引き続き、東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」から、八丈島での海面高度の今年の変化をグラフ作成したものです。図2によると、八丈島の海面高度は5月末に上昇していることがわかります。これは八丈島の南にあった黒潮が八丈島に近づいたためです。この海面高度上昇(黒潮の本州への接近)は一時的なもので、先週までJCOPEが予測してきたとおり、海面高度は再び低下し、黒潮離岸流路は継続しています。
では、今後はどう変化するでしょうか?図3は図2に対応する八丈島付近の海面高度をJCOPEのデータで見たものです。今までの変化を観測値も取り込んでJCOPEで分析した値が黒線で、図2と同様の変化を良く再現しています(注)。赤線がこれからの2ヶ月の予測値です。JCOPEの予測によれば、2回ほど大きく海面高度が上昇、すなわち黒潮が八丈島に近づきます。6/12予測・図5のアニメーションも見てみてください。しかし、いずれも一時的で、そのたびに海面高度は低下、すなわち黒潮離岸流路は継続すると予測しています。ただし、海面高度が安定的に低かった(離岸が大きかった)4月から5月前半に比べると変化が大きくなってきており、今後の推移が注目されます。
(注:図2が1地点の観測値であるのに対し、図3の値はモデルの分解能の約9km四方の平均であり、0の値の基準点も違うので、図2と図3の値は完全には一致しません。上昇と下降の変化の傾向を主に見て下さい。)