2020年4月の予測を検証します

毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。4月は予測通り、黒潮大蛇行が続きました。予測より黒潮蛇行は安定しています。

予測と実際(長期予測)

今回は2020年4月15日号の、4月6日から予測した4月30日までの結果を検証します。

4月15日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1左は、4月6日から予測した4月30日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる4月30日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、4月6日から4月30日までのアニメーションにしたものです。

4月15日号の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸している(C)こと、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました(A)。

黒潮が八丈島の北を流れる流路が継続すると予測していました(図1左B)。その予測は当たっています(図1右)[2]

あまり当たっていない点を挙げると、九州の南東に小蛇行ができると予測していましたが(図1左、D)、過大に予測しており、その影響で黒潮大蛇行の変形の予測が大きくなりすぎていました。また、黒潮は伊豆半島近くを流れると予測していましたが(図1左、B)、実際は離岸しています(図1左、B)。

Fig1

図1: [左]2020年4月6日から予測した4月30日の予測値。[右]観測値を取り入れて推測した4月30日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。

 


図2: 2020年4月6日から4月30日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。長期予測モデルJCOPE2Mをアップデートし、指標を水温3.3℃以下に変更しています。

図3の点線は、2020年4月15日号の4月6日からの予測による1か月の冷水面積の変化です。低下を予測していました。しかし、実際(黒実線)は、むしろ上昇しています。

黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約2年9か月[3]を越えておりおり、記録が確かな1960年代後半以降では、史上2番目の長さの1981-1984年(約2年7か月)より長くなっています(「黒潮大蛇行の歴史」参照)。

Fig3

図3: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列で黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した実際の値(解析値)。点線が2020年4月6日から4月30日までの予測。

予測と実際(短期予測)

今回は先週の4月27日から予測した5月3日の予測を検証します。図4上段は、4月27日から予測した5月3日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる5月3日の状態です。

黒潮大蛇行の変形を実際よりも大きく予想していました。そのため、東海から関東での黒潮の接岸をうまく予測できていませんでした。九州東部の離岸(小蛇行)は実際よりも大きく予測していました。

Fig5

図4: [上段]2月17日から予測した2月23日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した2月23日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。青は八丈島の位置。

  1. [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。
  2. [2]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い状態が続いており、黒潮が八丈島の北を流れる流路を示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。
  3. [3]2017年8月も1か月に加えて数えてます。気象庁に合わせた数え方です。