人工衛星で得られた大気中に存在する水蒸気量
出典:ウィスコンシン大学マディソン校宇宙科学工学センター https://cimss.ssec.wisc.edu/data/
( © University of Wisconsin-Madison, Space Science and Engineering Center )

がっつり深める

研究者コラム

線状降水帯を理解して大雨に備えましょう

記事

地球環境部門 大気海洋相互作用研究センター センター長 米山 邦夫

気象庁が6月1日午後、四国・中国地方に線状降水帯が発生する恐れがあるとの予測情報を出しました。先日のコラムでスーパー台風としてご紹介した台風2号が沖縄付近を北上したため、その台風の東側に吹き込む南の湿った空気が本州付近に存在する停滞前線近傍に存在する雲域に入り込む様子が人工衛星で得られたデータからも確認できます(動画1、図1)。

動画1.人工衛星で得られた大気中に存在する水蒸気量(海面から圏界面まで鉛直方向に足し合わせた量)。期間は5月30日0000UTC(日本時間午前9時)から6月1日1200UTC(同午後9時)まで。水蒸気を多量に含んだ空気が山岳地形の影響などで上昇し、凝結することで水滴(雨雲)ができるため、水蒸気の動きを追うことで雨雲の発生しやすい場所がわかります。日本の南に水蒸気の多い領域が東西に広がって分布していることと、台風に伴う高水蒸気量の領域が沖縄付近を北上している様子が確認できます。なお、速報値を使用しているためところどころデータの不連続部分が含まれます。
出典:ウィスコンシン大学マディソン校宇宙科学工学センター https://cimss.ssec.wisc.edu/data/
( © University of Wisconsin-Madison, Space Science and Engineering Center )
図
図1.2023年6月1日午後9時の実況天気図/出典:気象庁ホームページ(https://www.jma.go.jp/bosai/weather_map/)に「停滞前線」を追記

線状降水帯は気象庁の解説によれば「次々に発生する発達した積乱雲が列をなし数時間にわたりほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される長さ50~300km程度、幅20~50km程度の線状に伸びる強い降水域」とされています。今回発生が予測された線状降水帯に限らず今後も、特に停滞前線が日本付近にいるときには起きやすいので、どの地域であっても注意が必要です。気象庁などから発表される情報に留意して行動することが求められますが、同時に、提供される情報を正しく理解することが防災・減災の第一歩です。改めて、線状降水帯とはどのような特徴を持っているのか、この機会におさらいをしてみてはいかがでしょうか?

海洋研究開発機構では過去の事例に対して解説をしております。また、2022年8月には地球環境シリーズ講演会で「極端現象-豪雨をもたらすもの-」と題して第一線で活躍されている研究者に講演をしていただき、アーカイブ動画を公開しています。是非ご覧になり、天気予報などで流れる情報を正しく理解し、活用してください。


< 引用一覧 >
研究者コラム「“スーパー台風”台風2号と今後の見通し」(2023年5月26日掲載)
https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/column-20230526/

研究者コラム「線状降水帯の停滞が豪雨災害を引き起こす」(2020年7月6日掲載)
https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/column-20200706/

第19回 地球環境シリーズ講演会「極端現象-豪雨をもたらすもの-」アーカイブ動画(2022年8月19日開催)
https://www.jamstec.go.jp/j/pr-event/earth-env2022/index.html

第19回「地球環境シリーズ」講演会 『 極端現象 ―豪雨をもたらすもの― 』

気象庁・線状降水帯の説明
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yohokaisetu/senjoukousuitai_ooame.html

気象庁・天気図
https://www.jma.go.jp/bosai/weather_map/

米国ウィスコンシン大学マディソン校 宇宙科学工学センターによる水蒸気画像
https://www.ssec.wisc.edu/data/

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