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LIFE×研究者

[研究航海×プロマネ]EPMマエダ、オクツは、気配りで船上の毎日をフォローする。

記事

船上の研究者を支える、プロマネの仕事。

掘削技術、海洋科学、船舶運用などのさまざまな分野の専門家が一同に介し、時には数ヶ月もの深海調査を行う研究航海。その中には、「ちきゅう」の研究航海における、研究者たちの船上生活をプロマネする人たちも存在します。それが、EPM(エクスペディション・プロジェクト・マネージャー、研究支援統括)と呼ばれる人たちです。

地球深部探査船「ちきゅう」での集合写真(左)と、デリック(掘削やぐら)の写真(右)
地球深部探査船「ちきゅう」にて。集合写真(左)の背後に見えるデリック(掘削やぐら)の高さは、なんと70.1メートル!

EPMの毎日は、とにかく多忙です。船上の研究者がストレスなく毎日を送れるように、24時間体制でフォローするからです。そのためようやく自室に戻ってこれたときは、「体力を使い果たしていることが多くて、倒れ込むように寝てしまう」んだとか。

今回、そんなEPMのLIFEについてお話を伺ったのは、前田玲奈さんと奥津なつみさんの2人。前田さんは2012年にJAMSTECに入社直後、3つの研究航海にアシスタントとして参加。以来、「ちきゅう」での航海を中心にEPMの業務に携わっています。また奥津さんは、2020年よりEPMを担当。現在、アシスタントとして前田さんと共に研究航海のフォローを行っている人物です。

プロフィール写真

前田玲奈

研究プラットフォーム運用開発部門 運用部研究航海マネジメントグループ
技術主任
JAMSTEC歴10年。趣味は乗馬。

プロフィール写真

奥津なつみ

研究プラットフォーム運用開発部門 運用部研究航海マネジメントグループ
技術主事
JAMSTEC歴3年。趣味はチェロ。

乗船者が、研究に専念できる環境をつくる。

――EPMとしての主な業務内容を教えてください。

前田:昨年までは、主に「ちきゅう」での航海で、ラボ(船上にある研究室)を円滑に運営していくための準備をしたり、乗船している研究者たちへのサポートやスケジュール調整を行ったり、そういった作業を中心にやってきました。今年度からは「ちきゅう」以外の船舶の業務も担当しています。

奥津:EPMの業務は本当に幅広いので、よく人から「何やっているのか、よくわからない」と言われるんです。その内容を簡単に説明すると、「研究者が研究に専念できる環境をつくる」ことを柱に、「そのためにはどんな業務が必要なのか」を検討して、同時に実施していくイメージですね。

「ちきゅう」内部にある研究区画の写真
「ちきゅう」内部にある研究区画では、研究者がさまざまな調査・分析を行っています。それぞれの研究がスムーズに進むよう、EPMはぬかりなく気を配ります。

――乗船している時、どのような毎日を送っているのでしょうか。

前田:乗船中はとにかく全力で業務に振り切っていますね。どんな状況でも、脳みそが働いてない時間帯はない感じです。特にEPMの仕事は、個別の研究者の人たちがちゃんと働けているのかを考えて、不満や困りごとに対してセンサーを張り巡らせる必要がありますから。

奥津:私も乗船した瞬間からアドレナリンが出ている状態です。なので、乗船中はあっという間に時間が過ぎていく感覚がありますね。

写真
分析用サンプルの測定がようやく終了。最終確認で、サンプル一つひとつのチェックを行っている前田さん。

研究航海の生活は、「お祭り」みたいなもの。

――EPMで大変だと感じる瞬間は、どんな時ですか。

奥津:私の場合、あまりコア(試料)が取れない状況が続いて、仕事が前に進まない時は本当につらい。デスクの前でコアが来るのを待つしかない状態になりますから。

前田:確かに。時には3週間もコアが上がらないこともあるんですが、そうなると途端に研究が進まなくなります。すると、当然船内のムードもだんだんギスギスしてきて…。そんな時は、EPMが率先してストレス解消のため自己紹介や研究発表の会、映画の上映会、船舶ツアーなどレクリエーション的なイベントを開いたりしていますね。

ラウンジでのセミナーの様子
時にはラウンジで、乗船研究者がセミナーを行うことも。

奥津:また、研究者は乗船中に「どんなサンプリングを行ったのか」「それを使用して、どんな分析を行うのか」などをまとめたレポートを書く必要があります。でも、実際にサンプリングして、分析して…と多忙な最中にレポートを書かなければいけないので、仕事としてはとてもハードなんです。そこで、研究者たちのテンションを上げるために、乗船中に提出する最終原稿を出したチームには特別なシールを渡していたりします。

前田:その研究航海だけの特別なロゴが入ったシールなんですが、それがカッコいいんです。しかも、シールを渡す時に「一番最初に◯○チームがレポートを提出しました!」とアナウンスして、研究者の競争心を高めたり。だから、最終原稿の提出が終わった後は、すごく船内が盛り上がりますね。

写真
「放散虫」という、海のプランクトンを観察するための前処理をしているところ。

――研究航海でうれしいと感じる瞬間は?

前田:乗船中の生活はお祭りみたいなもの。とにかく毎日いろんなことが起こりますから。大変なことも多いですけど、準備さえしっかりしておけば業務は達成できる。だから、テンションを上げながらいつも楽しんでますね。強いて「最高!」と感じる瞬間を挙げるとしたら、プロジェクトが無事終了した時。下船の際に、研究者やオペレーターのみんなとハイタッチして別れるんです。その瞬間は、「やりきったな」と実感しますね。

写真
奥に見える磁力計にセットするため、古地磁気分析用の試料をラックから取り出している奥津さん。

奥津:プロジェクトが終了した時もそうですが、私はシャワーの時間も好きですね。「ちきゅう」船内って、あまり匂いがしないというか、普通に陸上で感じられるような、いろいろな匂いがしないんですよ。その状況が何日も続いていくと、だんだん良い匂いを嗅ぐことに飢えていくというか(笑)。というのも、学生時代に1ヶ月の研究航海に参加した時があったんですが、下船してコンビニに立ち寄った瞬間、いろんな匂いが流れてくるのにすごく感動して、思わず涙が出そうになったことがあったんです。その時、「ああ、私、匂いに飢えてたんだ」と実感して(笑)。そういうことがあって以来、航海に出る時は必ず自分の好きな香りのシャンプーを持っていくようにしていますね。

研究船内にある食堂の写真、ラーメンの提灯が出ている
研究航海は数ヶ月に及ぶこともあり、船内での食事はとても重要。今日のメニューはラーメン!?

「世界初の発見を生み出す」という誇りのために。

現在2人は、清水港に着岸している「ちきゅう」上で実施されるオンショア・サイエンスパーティー(船内の設備を使用し、乗船中と同様な状況で実施される研究調査)の準備に追われていると言います。このプロジェクトでは、830mものコアに対して、少人数でサンプリング、分析などの一連の作業を実施します。しかも、期間はたった1ヶ月! ハードな作業計画を無事に終えるためにも、「起こりうる可能性や出るかもしれない要望、可能かもしれない何らかの手段などを全部拾って、できるだけどんな状況になっても対応ができるように用意を整えている最中」だと言います。

「あらゆることがイレギュラーなプロジェクトなので、準備が本当に大変。でも、これを乗り越えれば、EPMとしてのオプションの幅が必ず広がるはずです。それに今回は、世界各地の研究者たちがリモートで参加して進行するという初めての試み。このプロジェクトが成功すれば、リモートでも調査データを提供できることが実証できますし、新たなメソッドの確立にもつながります。だから、今回の乗船も、やっぱり楽しみなんですよ」(前田さん)

学生時代から「ちきゅう」の大ファンで、「乗船したい!」という一心でJAMSTECにやってきたという前田さんと奥津さん。2人は最後に「『ちきゅう』のプロジェクトは、常に世界初の発見を生み出します。そんな新しい世界を切り開く挑戦に携われること、そして強いモチベーションを持った仲間たちと共に仕事ができることが誇りです」と熱い想いを語ってくれました。

前田玲奈・奥津なつみ×EPMのお仕事

研究航海では、まず出港後に掘削ポイントに移動し、長時間におよぶ掘削作業が開始される。そして、時間をかけてファーストコアが採取されると、ようやくそれを元に研究者たちの分析や研究がスタートする。EPMは、この船内で活躍する研究者と他の専門家たちをつなぐプロマネ役を担う。研究者たちが集中して業務を行えるよう乗船の数ヶ月前から準備を実施し、乗船後も毎日の生活のさまざまな事柄をフォロー。また、研究計画や航海後のデータ・論文作成の取りまとめなども行っている。

オンショア・サイエンスパーティーの様子
オンショア・サイエンスパーティーにて。奥に見えているのは、今回のプロジェクトのオフィシャルロゴ。

前田さん、奥津さんコメント

記事でも触れたオンショア・サイエンスパーティーの様子を含め、「ちきゅう」の研究活動はTwitterで発信しています:@Chikyu_JAMSTEC。JAMSTECの他の調査船は@Fleet_JAMSTECでチェック!

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