「ちきゅう」のための海流予測 (6) 4月3日現在の見通し

連載第2回で紹介したアンサンブル予測KFSJによる「ちきゅう」のための海流予測特別サイトが4月3日に更新されたので、それにもとづく見通しです。

図2は、特別サイトで見ることのできる、KFSJによる「ちきゅう」掘削地点での海面(深さ0m)での流速(青線)と流れの向き(緑線)の予測です。20のアンサンブルメンバーで計算しているので、予測結果の線が20本づつあります。

図2の流速(青線)を見ると、流速は3月末に約4ノット程度のピークだと推定しています。この推定は「ちきゅう」の流速観測で確かめられました(連載第5回参照)。

流速は次第に下降していくと予測していますが、4月にはいくつかの青線が流速の急激な下降を予測しています。流れが急速に変化する時期は予測によってばらばらですし、あまり流速が変化しないという予測の線もあります。つまり予測には幅があります。

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図1: KFSJによる3月25日からの予測。青線は海面(深さ0m)での流速(単位はノット。2ノットは約1メートル毎秒)。緑線は流れの向き(北向きが0度, 東向きが90度)。

 

図2は、図1の流速予測を3月25日から4月12日まで抜き出し、20本の予測の平均(赤線)・最大最小の幅(青く塗った範囲)・もっとも早く流速が急激に低下するとする予測(黒点線)にまとめ直した図です。20本の予測の平均では、流速は徐々に低下していくと予測しています(赤線)。一方、20本の予測の中には、4月8日を最小に、急激に流速が低下するという予測もあります(黒点線)。

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図2: 図1の流速予測を3月25日から4月12日まで抜き出しまとめ直した図。赤線は、20本の予測の平均(アンサンブル平均)。青く塗った範囲は、アンサンブルメンバーの最大・最小がおさまる範囲。黒点線は、もっとも早く流速が急激に低下するとする予測。

 

図3は、この流速が急激に低下すると予測している予測の4月8日の流速分布です。黒潮が南に押し下げられ、「ちきゅう」の掘削地点(図中の赤星)が黒潮からはずれ、掘削地点では流速が低下すると予測していることがわかります。これは、連載第3回の図1下段のイラストで説明した、黒潮を南に押し下げる離岸傾向jが「ちきゅう」掘削地点に到着する状況に対応します。ここまで流速が低下するという予測は20本中1本だけ(図1を見ると、ここまででなくても同じ時期に流速が3ノット以下になるという予測がもう一本)なので、確率は高くありませんが、4月8日頃にこのような状況が発生する可能性があります。

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図3: 「ちきゅう」掘削地点で、もっとも早く流速の急激な変化が起こると予測しているアンサンブルメンバーによる4月8日の流速分布。色は流速の大きさ(ノット)。矢印は流れの向きと流速の大きさ(ノット)。赤星()が「ちきゅう」掘削地点。

 

図4は図3でしめした流速予測を、3月25日から4月12日までアニメーションにしたものです。黒潮を南に押し下げる離岸傾向が上流の西から東に伝 わっていく様子がわかります。4月8日までに、黒潮からはずれた「ちきゅう」掘削地点は、その後は再び黒潮上になり、流速が回復します(図2も参照)。


図4: 図3と同じ図を3月25日から4月12日のアニメーションにしたもの。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。


 

特別サイトで見ることのできる予測図をもうひとつ紹介します。図5の青線は、KFSJによる串本・浦神潮位差の予測です(※1)。20のアンサンブルメンバーで計算しているので、予測結果の線が20本づつあります。2016/4/1日号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、串本・浦神の潮位差は紀伊半島・潮岬での黒潮の接岸・離岸の良い指標です。

図5のを見ると、20本の予測のほとんどが4月7日までに串本・浦神潮位差が低下すると予測しています(先週の予測の図では時期がもっとばらばらでした)。つまり、この時期までに潮岬で黒潮が離岸すると予測しています。連載第4回の段階では四国・室戸岬付近にあった離岸傾向jが、潮岬に今週到達すると予測しているようです。図1を見ると、潮岬での離岸は「ちきゅう」掘削地点での流速に、ほとんどのアンサンブルメンバーで大きな影響を与えないようですが、実際の串本・浦神潮位差の動向とあわせ(※2)、今後注視していきます。

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図5: 青線はKFSJによる串本・浦神潮位差の予測の時系列(単位メートル)。 20本の予測をしているので20本線がある。KFSJによる予測は5月9日まで。赤線はJCOPE2による予測。

 


※1
JCOPE2でも串本・浦神の潮位差の予測(赤線)をしていますが、分解能の問題により、ぼんやりとしか変化が見えないので、ここでは見ないことにします。

※2
串本・浦神潮位差の観測値は、気象庁、または、東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のサイトから見ることができます。


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「ちきゅう」のための海流予測の連載記事一覧はこちら
この連載では、流れの速さの単位として船舶でよく使われるノット(2ノットは約1メートル毎秒)を使用します。
「ちきゅう」のための海流予測KFSJの特別サイトはhttp://www.jamstec.go.jp/jcope/kfsj/です。KFSJついては連載第2回で紹介しました。
「ちきゅう」の観測の様子に関しては「ちきゅう」公式twitterを参照