JCOPE2とJCOPE2Mの違い (親潮ウォッチ2017/02)

北関東から東北沖に、黒潮続流の北上と暖水渦のため、かなり平年より水温の高いところが見られます。JCOPE2再解析とJCOPE2の改良版であるJCOPE2Mでは親潮周辺の海域の再現に差がありますが、気象衛星ひまわりの海面水温と比較するとJCOPE2Mの方が良く海面水温を再現できているようです。

はじめに

黒潮予測では2016年10月からJCOPE2の改良版であるJCOPE2Mを使用しています。ただし、親潮ウォッチの記事では、過去のデータとの比較の必要から、1993年からのデータが利用できるJCOPE2の再解析データも使用しています[1]。今年1月から、JCOPE2とJCOPE2Mの親潮の再現に違いが見られたので、違いに注意しながら親潮の状況を見ていきます。

水温の全体的な状況

まず、JCOPE2再解析のデータで、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2017年1月8日(2017/1/13号で解説)と2016年2月4日の海面水温の平年との差を見たものです。平年は1993から2012年の20年間の平均で、それより高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。

沖縄周辺では(図中C)では平年より水温の高い状況が続いています[2]

日本海では、先月(図1上段)より少し面積は減ったものの、平年より温度が高い場所が2月(図1下段)も引き続き広く見られます(図中D)。日本海の高水温については2017/2/8号「対馬暖流が強く大雪?」で解説しました。

北関東から東北沖の高水温(図中のAとB)については、以下でくわしく見ます。

Fig1

図1: JCOPE2再解析による海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(℃)。[上段]2017年1月8日。[下段] 2017年2月4日。

 

最近の親潮と黒潮続流

JCOPE2再解析のデータから、2016年2月4日の親潮と黒潮続流周辺の海面水温と流速を図2左にしめします。比較のために、図2右には、平年(1993から2012年の20年平均)の値をしめします。

現在(図2左)の東北沖には、時計回りの暖水渦(図中A)が存在しています。北関東沖では、黒潮続流が平年より北寄りに蛇行(図中B)しています[3]。これらの海域では平年より海面温度がかなり高くなっています(図1のAとB)。

東北沖の暖水渦(図2左A)でさえぎられるように、岸近くでは平年(図2右)に比べて、親潮が南下しにくくなっています(図の緑矢印, 親潮第一分枝[4])。一方で、沖側(図の青矢印、親潮第二分枝[4])は、時計回りの暖水渦にまきこまれるように、平年よりも南に入りこんでいます。

Fig2

図2: a) JCOPE2再解析による2017年2月4日海面での温度(色, ℃)と流れ(矢印, メートル毎秒)。b) 平年(1993年から2012年の平均)の2月4日の温度と流れ。

 

JCOPE2の改良版であるJCOPE2Mでも同じ領域を見てみましょう(図3左)。JCOPE2Mでは、時計回りの暖水渦を回り込んで、親潮第二分枝(青矢印)がさらに南まで入り込んでいることがわかります。気象衛星「ひまわり8号」[5]で観測された海面水温(図3右)と比較すると、JCOPE2M(図3左)の方がJCOPE2再解析(図2左)よりも、海面水温を良く再現していることがわかります。JCOPE2MはJCOPE2よりも「ひまわり8号」の海面水温を計算にうまく取り入れられるように改良されており、期待通りの働きをしているようです。

Fig2

図3: a) JCOPE2Mによる2017年2月4日の水深100メートルでの温度(色, ℃)と流れ(矢印, メートル毎秒)。b) 気象衛星「ひまわり8号」が観測した2月4日の海面水温(1日平均)。

 

親潮の勢力の指標である親潮の面積(図2・3の点線領域での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)の時間変化を見ると(図4)、JCOPE2再解析で計算すると(赤線)、親潮第一分枝が暖水渦にさえぎられるために、2017年1月は平年(黒細線)よりかなり小さい値でした。一方、JCOPE2Mで計算すると(青実線)、親潮第一分枝の弱さを、親潮第二分枝の南下が相殺するため、親潮面積は平年に近い値になっています。JCOPE2MとJCOPE2再解析の差は今年の1月から大きくなっています。暖水渦をまわりこんで入ってくる親潮第2分枝の表現が、JCOPE2再解析では難しかったようです。

 

Fig4

図4: 親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2015年1月から現在までのJCOPE2再解析から計算した時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。青実線は2016年10月から計算を始めたJCOPE2Mによる値。青天線は2017年2月10日からのJCOPE2Mによる予測。

 

親潮面積を各年で比べると(図5)、JCOPE2再解析で計算した場合(赤棒)、2017年1月は1993年以来過去4番目の小ささでした。これをJCOPE2Mで計算した場合(青棒の高さ)、過去9番目の小ささにあたります。

Fig5

図5: 親潮の12月の月平均面積を各年で比較。単位は104 km2。赤棒がJCOPE2再解析で計算した値。棒グラフの上の数字はJCOPE2再解析のデータでの1993年以降の小ささの順番。2017年1月の値をJCOPE2Mで計算すると青棒の高さになる。

 

2月10日からの予測

図6は、JCOPE2Mによる2月10日から4月13日までの予測をアニメーションにしたものです。親潮域の水深100mの水温(左図)と平年(1993から2012年の平均、右図)を比較しています。暖水渦や、親潮の勢力の指標である水温5度線に注目して見てみてください。東北沖に現在ある暖水渦は弱まりますが、黒潮続流域から暖水渦が入れ替わるようにして入ってきて、再び強くなると予測しています。

親潮面積で見ると(図4の青点線)、しばらく平年並みの値が続きますが、その後は平年より小さくなるという予測になっています。

親潮と黒潮続流の周辺の最新の予測は、JCOPE のweb pageで週2回更新されているので、参照してください[6]


図6: 親潮域の水深100mでの2017年2月10日から4月13日までの水温(左図)の、JCOPE2Mによる予測と、平年(1993から2012年のJCOPE2再解析の平均、右図)の比較のアニメーション。親潮域の指標として水温5度に黒太線で等値線をひいてある。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 週に2回更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。


  1. [1]将来的には、JCOPE2Mを使用して1993年までさかのぼって再計算されたデータ(再解析)が作成される予定です。
  2. [2]沖縄周辺の高温については、海面水温が1月としては解析値の存在する1982年以来最も高くなったことを沖縄気象台が発表しています。
    1月の沖縄地方の平均気温と沖縄周辺海域の海面水温が過去最高」(報道発表資料, pdf, 2017年2月1日)
  3. [3]2016/07/22号「暴れる黒潮続流」参照。
  4. [4]親潮第一分枝、第二分枝については親潮ウォッチ2015/07で解説しました。
  5. [5]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。アプリケーションラボの私達のグループとJAXAでは「ひまわり」データの海洋予測への利用について共同研究を進めています。
  6. [6]親潮・黒潮続流関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。