海面水温は西高東低 (親潮ウォッチ2017/08)

北・東日本の天候不順にともない、親潮域の海面水温が下がっています。岸よりの親潮は昨年や平年よりも強く、この傾向が続くと予測しています。

全体的な状況

まず、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2017年7月16日(親潮ウォッチ2017/07で解説)と、2017年8月17日の、海面水温の平年との差を見たものです[1]。平年は1993から2012年の20年間の平均で、それより高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。

7月はほぼ全域で平年よりも温度が高くなっていました(図1上段)。8月になると、西日本周辺では水温が平年より高くなっている一方、東日本周辺では水温が平年より低い海域が目立っています。これは8月前半に北・東日本太平洋側で不順な天候が続いたためです[2]

沖縄気象台によると、沖縄の南の海域では7月の海面水温が過去最高でした[3]。その後、台風5号が通過し、水温がやや下がりましたが、暑い天候が続いているために平年より高い水温が続いています。

Fig1

図1: 海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(℃)。[上段]2017年7月16日。[下段] 2017年8月17日。

 

親潮の様子(海面)

次に親潮周辺の様子を詳しく見てみましょう。図2左は、図1下段を親潮域で拡大した図です。上で述べたように親潮域周辺で全体的に平年より冷たくなっています。

図2左は、対応する海面温度そのものと、流速です。この図の親潮の位置と暖水渦の位置と、図2右の図を比較してみると、親潮が流れているところでは水温が平年より冷たくなり、暖水渦では平年より高くなっていることから、天候だけではなく、海流の影響もありそうです。

Fig2

図2: [左図] 2017年8月17日の親潮周辺の海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(℃)。[右図] 同じく2017年8月17日の海面水温(色、℃)と流速(矢印、メートル毎秒)。

親潮の様子(海面下)

天気の影響を受けにくく海流の様子が見やすい海面下の水深100メートルの様子を見てみましょう(図3左図)。昨年の状況とも比べます(図3右)。昨年は北海道南東に暖水渦が居座っており、親潮(水色矢印)が沿岸沿いに南下するのを完全にさまたげていました(図3右)。今年は渦が岸から離れており(図3左)、昨年とは違い、親潮が岸沿いに南下するのをさまたげていないようです。

Fig3

図3: 水深100メートルでの水温(色、℃)と流速(矢印、メートル毎秒)。[左図]今年の8月17日。[右図] 昨年の8月17日。

今年のサンマは?

昨年は、暖水渦のために親潮の沿岸沿いの南下がさまげられたことがサンマの不漁の原因の一因とされています。水産庁の今年の「サンマ長期漁海況予報」[4]によると、海流に関しては、私たちの予測と同じく、暖水渦で親潮の南下がさまたげられることはないようです。ただ、サンマ漁自体は低調に推移すると予測されており、海流だけで漁獲量が決まるわけではなさそうです。

8月17日からの予測

図4は、JCOPE2Mで8月17日から予測した8月31日の親潮域の水深100mの水温(左図)と平年(1993から2012年の平均、右図)を比較しています。水温5度の等値線が親潮の勢力の指標になっています。

今のところ、沿岸寄りの親潮(親潮第一分枝、OY1)の南下は、暖水渦に邪魔されないようです。一方で、沖側の親潮は(親潮第二分枝、OY2)、暖水渦のため南下しにくいと予測しています[5]

図5は、図4に対応する8月17日から10月19日までの予測をアニメーションにしたものです。親潮域の水深100mの水温(左図)と平年(1993から2012年の平均、右図)を比較しています。予測通りであれば、沿岸寄りの親潮の南下は暖水渦でさまたげられず、むしろ例年より南下しそうです。ただし渦の動きの予測は難しいので、予測が変わる可能性があります。最新の予測は週2回更新されるJCOPE のweb pageでチェックしてみてください。

Fig4

図4: JCOPE2Mで2017年8月17日から予測した8月31日の親潮域の水深100mでの水(左図)と、平年(1993から2012年のJCOPE2再解析の平均、右図)の比較。親潮域の指標として水温5度に黒太線で等値線をひいてあります。

 

 


図5: 親潮域の水深100mでの2017年8月17日から10月19日までの水温のJCOPE2Mによる予測(左図)と、平年(1993から2012年のJCOPE2再解析の平均、右図)の比較のアニメーション。親潮域の指標として水温5度に黒太線で等値線をひいてあります。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

親潮面積

JCOPE2Mによる推定によれば(図6青太線)、親潮の勢力の指標である親潮面積(図4の点線領域での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)[6]は、親潮第一分枝が強い一方、第二分枝が弱いために、平年並みの値になりそうです。

Fig6

図6: 親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2015年1月から現在までのJCOPE2再解析から計算した時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。2016年10月からは、JCOPE2再解析の代わりに、新モデルであるJCOPE2Mによる値(青実線)を使用。青点線は2017年8月17日からのJCOPE2Mによる予測。

 

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを、昨年や平年の値はJCOPE2再解析を使用しています。
  2. [2]参照:「平成29年(2017年)8月前半の北・東日本太平洋側の不順な天候及び沖縄・奄美の高温について」(気象庁, 2017/8/17)。
  3. [3]参照「沖縄の南の海域で7月の海面水温が過去最高」(pdf, 沖縄気象台2017/8/1)。
  4. [4]平成29年度 サンマ長期漁海況予報(道東~常磐海域)(水産庁 2017/8/4)。
  5. [5]親潮第一分枝・第二分枝については、親潮はどんな流路になっているの?(親潮ウォッチ2015/7)で解説しています。
  6. [6]親潮面積については、「親潮が記録的なあたたかさ(親潮ウォッチ2015/9)」で解説しています。

黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 週に2回更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

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