黒潮大蛇行が続いており、期間が史上2番目の長さになっています。小蛇行の影響で、大蛇行は不安定になる可能性があります。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(10日先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは9月15日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します[1]。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2020年7月7日の状態の推測値、図2・3は8月15日・9月15日の予測です。黒潮大蛇行の期間は約2年11か月を越え、記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さの黒潮大蛇行になっています(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照。)。
東海沖の典型的な黒潮大蛇行が続いています。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい、(2)紀伊半島・潮岬での離岸、(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。
蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[2]。大蛇行から渦がちぎれていますが(図1 A’。「黒潮大蛇行から渦がちぎれました」参照。)、まだ北緯32度を越えて黒潮が大きく蛇行しています(A, 図1)。小蛇行(D’)の影響で、黒潮大蛇行は再び不安定になり、再び渦がちぎれる可能性があります(図3 A”)。このため、大蛇行が大きく減衰する予測になっています。ただし、現在ちぎれている渦A’も、もっと大きな渦のちぎれを予測されていましたが(例えば5月20日号)、次第にそれほどでもないように予測が修正されたので、まだ様子を見る必要があります。
黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[3]。予測でも潮岬での離岸は継続すると予測しています。
黒潮は八丈島の北を通過する流路が続くと予測しています(C)[4]。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動するのが黒潮大蛇行の通常の終わり方ですが、いまのところ予測されていません。
四国・室戸岬と足摺岬で離岸していますが、小蛇行(D’)の進行にともない、室戸岬に黒潮が近づく時期があると予測しています(図2)。
図4は、2020年7月7日から9月15日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 2020年7月7日から9月15日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図5は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[5]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。
黒太線が現在の推定値で、昨年8月になってから弱くなりましたが、9月以降は強さを回復しています。最新の予測(赤線)は渦A”のちぎれの影響で、先週の予測(黒点線)より大幅に下方修正になっています。このまま下がっていくか、今後の様子を見る必要があります。
- [1](注:2020/4/15日号の予測より、予測モデルへの海面高度観測のデータの入れ方を変更しています。)↩
- [2]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [3]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [4]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い位置を保っており、黒潮が八丈島の北を流れていることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [5]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。