黒潮大蛇行は、2017年の8月に始まってから期間が約3年となり、史上2番目の長さです。大蛇行は続くと予測していますが、大蛇行は不安定な状況が続きそうです。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(10日先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは10月1日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します[1]。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2020年7月23日の状態の推測値、図2・3は9月1日・10月1日の予測です。黒潮大蛇行の期間は約3年となり、記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さの黒潮大蛇行になっています(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照。)。
東海沖の典型的な黒潮大蛇行が続いています。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい、(2)紀伊半島・潮岬での離岸、(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。
蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[2]。大蛇行から渦がちぎれましたが(図1 A’,「黒潮大蛇行から渦がちぎれました」参照)、まだ北緯32度を越えて黒潮が大きく蛇行しています(A, 図1)。ちぎれた渦A’の一部は再び大蛇行にくっついています。大蛇行の南端から再び渦がちぎれそうになるか、ちぎれた後に再びくっつく形で大蛇行が続くと予測しています(短期予測も参照)。渦がちぎれるかどうか様子を見る必要があります。
黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[3]。予測でも潮岬での離岸は継続すると予測しています。
黒潮は八丈島の北を通過する流路が続くと予測しています(C)[4]。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動するのが黒潮大蛇行の通常の終わり方ですが、いまのところ予測されていません。ただし、今より大蛇行は東に移動すると予測しています(図3)。
四国・室戸岬と足摺岬で黒潮の離岸が続くと予測しています。
図4は、2020年7月23日から10月1日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 2020年7月23日から10月1日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図5は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[5]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。
黒太線が現在の推定値で、昨年8月になってから弱くなりましたが、9月以降は強さを回復しています。先週の予測よりも大蛇行から渦がちぎれそうになるため、最新の予測(赤線)は先週の予測(黒点線)より下方修正になっています。ただ、その後に強さを回復すると予測しています。
- [1](注:2020/4/15日号の予測より、予測モデルへの海面高度観測のデータの入れ方を変更しています。)↩
- [2]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [3]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [4]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い位置を保っており、黒潮が八丈島の北を流れていることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [5]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。