毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。予測通り大蛇行から渦がちぎれましたが、黒潮大蛇行は続いています。渦のちぎれの影響は予測よりも小さくなっています。 |
予測と実際(長期予測)
今回は2020年6月24日号の、6月17日から予測した7月23日までの結果を検証します。
6月24日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。
図1左は、6月17日から予測した7月23日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる7月23日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、6月17日から7月23日までのアニメーションにしたものです。
6月24日号の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸している(C)こと、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置する(A)ことを予測できていました。
予測では黒潮大蛇行から渦がちぎれると予測しており、実際そうなりました(「黒潮大蛇行から渦がちぎれました」参照)。ただ、予測ではちぎれた渦が離れていくと予測していた一方、実際にはちぎれた渦の一部が再び大蛇行にくっついています(A’)。
黒潮が八丈島の北を流れる流路が継続すると予測していました(図1左B)。その予測は当たっています(図1右)[2]。
四国の室戸岬でも足摺岬でも大きく離岸することも予測できていました。
図2: 2020年6月17日から7月23日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)
大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。長期予測モデルJCOPE2Mをアップデートし、指標を水温3.3℃以下に変更しています。
図3の点線は、2020年5月27日号の6月17日からの予測による1か月の冷水面積の変化です。渦がちぎれることにより、下降を予測していました。実際にはちぎれた渦の一部が再びくっついたこともあり、黒潮大蛇行の強さはたもたれています。
黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約3年[3]になっており、記録が確かな1960年代後半以降では、史上最長の1975-1980年(約4年8か月)に次ぐ長さになっています(「黒潮大蛇行の歴史」参照)。
予測と実際(短期予測)
今回は先週の7月20日から予測した7月26日の予測を検証します。図4上段は、7月20日から予測した7月26日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる7月26日の状態です。
大蛇行の南端から渦がちぎれると予測していました(A’)。その予測はほぼ当たっています。ただし、今週の予測によれば再び大蛇行にくっつく形で渦が離れない状態が続きそうです。他に異なっているところをあげると、予測よりも黒潮が東海沿岸近くを流れているようです。
- [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩
- [2]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い状態が続いており、黒潮が八丈島の北を流れる流路を示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [3]2017年8月も1か月に加えて数えてます。気象庁に合わせた数え方です。↩