2021年4月23日までの黒潮「長期」予測(2021年2月18日発表)

黒潮大蛇行が始まって3年6か月を越えています。黒潮大蛇行は昨年夏以前より弱くなっていますが、以前の予測よりは安定してきているようです。

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは4月23日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。

予測

図1は2021年2月12日の状態の推測値、図2・3は3月9日・4月23日の予測です。水位0.3mの位置に太線を黒潮の流軸の推定値として加えています。詳しくは「海洋速報」黒潮流軸とモデル予測の比較の解説をご覧ください。

黒潮大蛇行が続いています(図1)。紀伊半島・潮岬(B)で大きく離岸しています。中断の期間を含めれば黒潮大蛇行は約3年6か月を越えています。記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さです(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照)。以前の大蛇行を作っていた渦Aは九州の南東で黒潮にくっついています。一連の変化については、「黒潮大蛇行の入れ替わり (2020/9-2021/2)」をご覧ください。

蛇行(D’)はさらに大きくなる予測ですが、途中で小さな渦(D)がちぎれるなど(図2)、やや不安定です。

黒潮が八丈島の北を流れる流路が続きますが(C, 図1~3)、一時的に八丈島の南を通る流路になる時期もありそうです(図4)。

大蛇行から渦がちぎれたり(図2)、大蛇行D’の他に小蛇行Aがあったり(図3)と、典型的な黒潮大蛇行としては不安定ですが、黒潮大蛇行は続くと予測しています。以前の予測より安定してきているようです。

図4は、2021年2月12日から今年4月23日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: 2021年2月12日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面水位(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。黒太線は海面水位0.3mの等値線で、黒潮の流軸の推定値。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2021年3月15日の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2021年4月23日の予測値。

 


図4: 2021年2月12日から4月23日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

潮岬での接岸

串本と浦神の日平均潮位差が大きいことは、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸していることを意味します[1]。図5は気象庁のデータから作成した串本・浦神の潮位差の時間変化です。黒潮大蛇行が始まった2017年後半から潮岬で黒潮が離岸していたため低かった潮位差は、昨年10月に黒潮が接岸したため急上昇しました。潮位差は再び下降しており、黒潮が離岸していることをしめしています(図1)。

Fig4

図5: 串本と浦神の潮位差(串本の潮位から浦神の潮位を引いたもの)の時間変化。単位はセンチメートル。データは気象庁のサイトで入手した。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ

図6は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[2]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。

黒潮大蛇行を作る渦は昨年の夏以降に渦がちぎれたことで弱まっていましたが、次第に強くなってきています(黒太線)。最新の予測(赤線)は先週の予測(黒点線)とほぼ同じです。途中で渦がちぎれるため再び弱まると予測しています。昨年の夏よりはやや弱いなりに同程度の値が続くと予測しており、以前の予測より安定してきているようです。

Fig6

図6: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(東海沖水深1000mで水温3.3℃以下の海域の面積)の1日ごとの時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測。


  1. [1]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  2. [2]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。