2022年10月23日までの黒潮「短期」予測 (2022年10月5日発表)

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは10月23日までのJCOPE-T DAによる短期予測を解説します。短期予測では、黒潮の沿岸への影響がテーマです。

現状と予測

図1・2・3はJCOPE-T DAで計算した2022年10月3日・10月13日・10月23日の黒潮の状態です。水位0.3mの位置に太線を黒潮の流軸の推定値として加えています。

黒潮大蛇行(A)が続いています(長期予測も参照)。

黒潮が八丈島()をはさんで東西に分岐した形になっています(図1, 白矢印)。西に分岐した黒潮は紀伊半島の東で時計回りの渦になっています。このため、黒潮大蛇行はゆがんだ形になっていますが(図1)、ゆがんだ形は解消されて(図2,3)、黒潮大蛇行は継続する予測です(今週の長期予測の付記も参照)。

四国・足摺岬(図2)と室戸岬(図3)の順で黒潮が近づくと予測しています(C)。

図4は10月3日午前9時から10月23日午前9時までの予測のアニメーションです。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。

Fig1

図1: 2022年10月3日午前9時の予測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C)。1度毎の等温線も薄く加えた。黒太線は日平均海面水位0.3mの等値線で、黒潮流軸の指標。青丸()が八丈島の位置。クリックすると拡大します。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし10月13日午前9時の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし10月23日午前9時の予測値。

 


図4: 2022年10月3日午前9時から10月23日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。黒太線は日平均海面水位0.3mの等値線で、黒潮流軸の指標。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。


今週のハイライト: 黒潮大蛇行と海底地形

リニューアル公開されたJAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」)から特徴的な図を毎週紹介します。黒潮親潮ウォッチは1週間に一回の更新ですが、海中天気予報のサイトではほぼ毎日予測が更新されます。

海中天気予報のサイトでは、モデルで推定した流れと海底地形の図を重ねることで両者の関係を見ることができます。図5は、10月5日のモデル推定による海面の流れと海底地形の図を重ねた図です。

黒潮大蛇行(A)は、伊豆海嶺と呼ばれる海底山脈の西に存在していることがわかります。「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」で解説したように、黒潮大蛇行をつくる反時計回りの渦(A)が伊豆海嶺の西に存在している間は黒潮大蛇行が安定します。黒潮大蛇行の渦が東に進み伊豆海嶺を乗り越えるようになると黒潮大蛇行が終わりに近づきます。まだ黒潮大蛇行の図は完全に伊豆海嶺の西にあるので、黒潮大蛇行はまだ継続するでしょう。

Fig3

図5: モデルによる流れ推定値(矢印)の図(①で指定)と海底地形(背景地図を背景なしにし②、外部機関地図タイルを色別標高図(国土地理院)とした)。