黒潮続流が引き続き北に(親潮ウォッチ2023/11)

見通し(長期予測)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で10月12日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。

黒潮続流(A)が例年に比べて異常に北上しており東北沖は水温が高くなっています。また北海道南東方沖には暖水渦(B)が存在します。その合間をぬって、親潮が南下しています(図6も参照)。水温5度線(赤線)は平年(青線)より広がっており、平年より水温が高くなっています。気象庁が診断している親潮の面積も平年より小さくなっています。

黒潮続流の北上(A)の南は流れとしてくびれており、渦としてちぎれそうな形をしています(図5、6参照)。しかし、今後の予測(図2~3)は、渦がちぎれそうで、ちぎれずに続くという予測になっています。先月までの予測では渦がちぎれると予測して、じっさいにはちぎれないということが続いており、黒潮続流の北上はなかなか解消しがたいようです。ちぎれた場合も暖水渦として影響が残りますし、沖合の暖水渦(B)の影響もあるので、親潮域は水温が高い状態が続くでしょう。

日本海では水温が高く、北海道北部で水温5度線の分布が平年よりも広がっており、それが続く予測です(C)。気象庁の対馬暖流の勢力の時系列(日本海における深さ 100m の水温が 10℃以上の領域の面積)も、平年よりかなり高くなっています。

図4は2023年11月17日から来年1月26日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: JCOPE2Mによる2023年11月17日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い赤線を引いた。青線は1993-2020年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2023年12月26日の予測。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2024年1月26日の予測。

 


図4: 図1に対応する2023年11月17日から2024年1月26日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

 

今月のハイライト: 暖水渦としてちぎれるか?

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (解説は「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。

図5と6は、先月10月22日と今月11月22日の「ひまわり」観測の海面水温です。

黒潮続流の北上により、

黒潮続流の北上により、東北沿岸で水温が高くなっています(A)。暖水北上の南側(B)では先月より今月の方がくびれており、暖水部(A)が暖水渦として、ちぎれっても不思議ではない形をしています。暖水渦としてちぎれるのか、このまま黒潮続流の北上が続くのかが、今後の注目点です。

Fig5

図5:2022年10月22日一日平均の人工衛星「ひまわり」海面水温観測(色、①で指定)。色の幅は5~28℃とした(②で指定)。

 

Fig5

図6:図5に同じ。ただし11月22日。


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

  1. [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。