黒潮親潮ウォッチでは2024年も様々なトピックを扱ってきました。黒潮親潮ウォッチの過去の記事一覧はこちら(リンク)で見ることができます。2024年の話題を5大ニュースとして振り返ります。
1) 記録的な海洋熱波の年
昨年もそうでしたが、今年の日本周辺の水温の高さは記録的でした。図1は1993年から2024年までの日本周辺年平均水温の時系列です。海面(赤線)でも水深100m(青線)でも、過去最高だった2023年を抜いて、2024年が最も水温が高い年です。
各月の海洋熱波・記事については「最近の海洋熱波・寒波」記事をご覧ください。
参照:「2024年(令和6年)の天候のまとめ(速報)」 (気象庁, 2024/12/25)
2) 黒潮続流の極端な北上と暖水渦
2023年から黒潮続流が極端に北上し、東北沖まで黒潮続流が流れる状況が続きました(「2023年の親潮をアニメーションで振り返る(親潮ウォッチ2024/1) 」など)。その北上は続流から渦がちぎれる形でいったん解消したものの(黒潮続流の北端から渦がちぎれた(親潮ウォッチ2024/5))、暖水渦はそのままに、黒潮続流も再び極端に北上する状況に戻りました(黒潮続流と暖水渦のダブルパンチ(親潮ウォッチ2024/11))。そのため、東北・北海道太平洋沖では記録的に高温で、海洋熱波が続きました。その状態は現在もまだ続いています(「最近の海洋熱波・寒波(2024/12) 今年は史上最高水温」) 。この海洋熱波は陸上の猛暑にも影響を与えると考えられています(最近の海洋熱波・寒波(2024/7)陸上の猛暑へも影響)。
3) 黒潮大蛇行が7年を超え、今も続く
2017年8月に始まった黒潮大蛇行は7年を超え2024年も続きました。現段階では終わる徴候は予測では出ていません(黒潮長期予測を参照)。「黒潮大蛇行が始まって7年に」の記事では7年強の黒潮大蛇行の経緯をアニメーションで振り返っています。
4) hotspot3研究プロジェクト開始
「hotspot2研究プロジェクトがスタート」で2019年に紹介したhotspot2研究プロジェクトが3月に終わり、4月からはhotspot3「ハビタブル日本:島嶼国日本の生存基盤をなす大気・海洋環境の持続可能性」がスタートしました。ホームページでは既にいくつかの研究成果が報告されています。筆者はサブ課題「A03-7 黒潮大蛇行と海洋極端現象の過去・現在・未来:予測可能性と海洋生物資源への影響」の分担研究者です。hotspot3で得られた研究成果は、今後黒潮親潮ウォッチでも紹介していきます。
5) 海中天気予報の解説論文出版
アプリケーションラボの林田研究員が中心となって執筆した海洋予測の解説論文が出版されました。専門家以外も対象として書かれていますので、興味のあるかたは是非ご一読ください。
林田 博士・宮澤 泰正・美山 透・馬場 雄也・木戸 晶一郎, 解説:海中天気予報, 海の研究(Oceanography in Japan),33(5, 6),89-101,2024,doi: 10.5928/kaiyou.33.5︲6_89 (pdf)