最近の海洋熱波・寒波(2024/12) 今年は史上最高水温

最近の水温の状況

最近の日本周辺の海面の水温の状況を見てみます。

図1は、11月27日と12月17日の海面の水温の平年との差を見たものです[1] 。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。図2は、同じく水深100mの図です。水深100mでも海面と同じ変化が見られれば、水温の平年との差が天気だけでなく海流の影響を受けている可能性が高くなります。

ここしばらく寒い天候が続いたので、海面では平年より冷たい海域が以前より増えています(図1)。水温の低下は海面下(図2)の水温が高くない海域で起こっています。しかし、海面で水温が平年よりかなり高い海域では水温が冷えにくいため、海面でも水温がかなり高い状態が続いています。

東北・北海道太平洋側は、黒潮続流が北よりに流れているのと、暖水渦が存在しているために、海面だけでなく、海面下も水温が高くなっています(「暖水渦はやや東に」(親潮ウォッチ2024/12)参照)。

日本海でも海面・海面下とも温度が高くなっています。日本海の水温が高いので、ドカ雪がふる可能性に注意が必要かもしれません(対馬暖流が強く大雪?参照)。今年は日本海北部の水温が高いのが特徴です(12月19日黒潮「短期」予測のハイライト参照)。

海面下の黒潮大蛇行による冷水渦のある紀伊半島南の海域だけは、水温が平年より低くなっています(特に海面下)。黒潮が流れ込む東海・関東沿岸では逆に水温が高くなっています。東北大学の杉本周作准教授は、黒潮大蛇行により東海地方の夏季降水量が増加することを発見し、それが台風や2020年豪雨などの降水量にも影響を与えていたことを明らかにしています。

東海地方に豪雨と猛暑をもたらしたのは「黒潮の大蛇行」の影響と解明 ~黒潮が及ぼす影響を高解像度の気候シミュレーションで分析 ~2024年12月23日  プレスリリース

気象庁によれば、日本近海の年平均海面水温は、これまでの1位の記録(2023年)を大きく上回って統計開始以降最も高い値となる見込みになっています。

2024年(令和6年)の天候のまとめ(速報)(気象庁 2024/12/25)

今後の日本周辺の水温については、「季節ウォッチ」も参考にしてください。平年より高い水温が続くことが予測されます。

図1: 海面の温度の平年との差(℃)。[上段]2024年11月27日。 [下段] 2024年12月17日。台風の経路はデジタル台風のデータを使用した。

図2: 図1に同じ、ただし水深100m。

海洋熱波・海洋寒波

海洋熱波とは、数日以上極端に海水温が上昇する現象です。その発生頻度は近年に大幅に増加しており、海洋生態系に与える影響が危惧されています([プレスリリース] 北海道・東北沖で海洋熱波が頻発していることが明らかに)。

図3は、海洋熱波でよく用いられている基準[2]を使って日本周辺の海面での海洋熱波・寒波の発生状況を見たものです。同じく、図4は水深100mでの海洋熱波・寒波の発生状況です。

数字が1以上になっている所が統計的に10%以下しか発生しない高い温度である海洋熱波が発生している所です。数字が大きいほど強い海洋熱波であることをしめしています。図1,2(b)が平年よりどれだけ水温が高いのかを温度差でしめしているのに対し、図3,4はその中でもまれな温度変化をしめしています。

海面(図3)でも水深100m(図4)でも、目立つ海洋熱波は東北沖太平洋沖、北海道南東、日本海、東海沿岸です。特に暖水渦や黒潮続流の影響を受けている東北沖太平洋沖は、レベル3以上の海洋熱波が見られます。日本海でもレベル3以上の海洋熱波が見られます。

日本黒潮大蛇行の冷水渦では、水深100mでレベル4(極端)の海洋寒波になっています。

図3: 2024年12月21日における日本周辺水深1mの海洋熱波と海洋寒波の発生状況。

 

図4: 図3に同じ、ただし水深100m。

 

アニメーション

図5は水温、平年からの差、海洋熱波指数のアニメーションです。

図5: JCOPE2Mによる2024年11月27日から2024年12月17日までの水温、平年からの差、海洋熱波指数。左が水温(等値線, ℃) 、温度の平年との差(色, ℃) 。平年は1993-2020年平均。右が海洋熱波指数。上段が水深1m。下段が水深100m。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

 

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2020年の平均を使っています。JCOPE2M再解析データは学術研究利用では無償で公開しています。
  2. [2]JCOPE2Mの1993~2020年のデータを使い、統計的に10%以下(90パーセンタイル)の高温が5日以上続いた場合に海洋熱波としています。平年との差が海洋熱波の基準(90%タイルと気候平均の差)の2倍以上である場合は2,3倍以上である場合は3とカテゴリー化しています。逆に統計的に10%以下(10パーセンタイル)の低温が5日以上続いた場合には海洋寒波としています。