7月23日から8月20日の予測を検証します

毎月月末は過去1カ月の予測を検証する予定です。今回は2016年7月29日号の、7月23日から8月20日までの予測を検証します。

図1上段は、7月23日から予測した8月20日の黒潮の状態です。7月29日号の予測のポイントは、離岸傾向tをきっかけに、黒潮流路が8月に一時的にも、八丈島の南を流れる離岸流路的な状態になるということでした(図1上段)。残念ながら離岸傾向tは予想ほど発達せず、そのまま黒潮が八丈島の北を流れる接岸流路になりました(図1下段)。離岸流路になるという予測は次の8月5日号の予測で修正されはじめ、8月12日号では接岸流路が当面続くという予測に変化しました。

7月29日号の予測のもう一つのポイントは、九州東岸でおおきな離岸(小蛇行)が発達するというものでした(図1上段)。実際には(図1下段)、離岸がやや大きめになっているものの、予測(図1上段)ほどではありませんでした。離岸は時期が遅れるもののやはり発達すると今週号でも予測しており、来月号で再び検証します。

図2は2016年6月18日から7月23日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: [上段]2016年7月23日から予測した8月20日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した8月20日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。アルファベットt,u,..は接岸・離岸傾向の波(今週号の現状・予測参照)。


図2: 2016年6月18日から7月23日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

kurokatsu


八丈島付近の黒潮流路について、詳しく見てみましょう。過去の解説で(※1)、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

観測を確認してみましょう。図3は、過去の解説でも使用した、東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」から、八丈島での海面高度(潮位)の今年の変化をグラフ作成したものです。7月になって上昇した八丈島の潮位は、8月になっても高いままです。これは、上で述べたように、黒潮が接岸流路が続いている証拠です。

Fig3

図3: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」の「各潮位データの図示」から、「期間: 2016年までの 1年間」で、「八丈島」でグラフ作成。単位はセンチメートル。矢印と字で注釈を追記した。

 

2016/8/31追記

(参考) 海上保安庁は、8月23日頃に八丈島の北側を流れる流路になったとしています。
本州南方の黒潮流路について (海上保安庁 2016/8/24)


※1 過去の八丈島水位の解説一覧はこちら