「ちきゅう」のための海流予測2 (9)航海終了!

航海無事終了

地球深部探査船「ちきゅう」は、温度モニタリング装置の設置など最後の作業を終え、2ヶ月近くに及んだ航海を無事終了しています。

「ちきゅう」公式Twitterより

その「ちきゅう」と支援船から、航海最後の観測データが届いたので、今回はそれについて見てみましょう。

図1の赤記号は、前回の続き、10月31日午前9時から11月10日12時までの「ちきゅう」の位置です。11月9日まで掘削地点付近で作業を続けていました。その後、高知へと向かっています。高知では「ちきゅう」の一般公開が開催されました。

今回の観測には支援船2隻も参加しています。支援船は、「ちきゅう」に物資を補給したり、「ちきゅう」の上流から強い海流が来ないかを警戒したりすることで、「ちきゅう」の観測を助ける役目を担っています。今回、支援船1(新潮丸、緑線)と支援船2(第八明治丸、青線)は、交替で役目を果たした後、支援船1(緑線)は高知へ、支援船2(青線)は和歌山へと向かっています。

「ちきゅう」の観測については「ちきゅう」公式Twitter「ちきゅう」船上レポートをご参照ください。

Fig1

図1: 「ちきゅう」(赤線)、支援船1(新潮丸、緑線)、支援船2(第八明治丸、青線)の航路。●がそれぞれの期間のスタート地点で、▲がそれぞれの期間の最終地点。10月31日午前9時から11月10日午前12時まで。

 


「ちきゅう」が観測した流速

図2は「ちきゅう」が掘削地点付近で観測した海流の流速です。海面での流速(赤線、15m)は、1ノット前後で変動していました。11月7日ごろにやや大きくなっており、11月5日ぐらいがピークではないかとした前回の予測とは少しずれていました。11月6日から7日にかけてやや強い風が吹いたので(図略)、その影響があったのかもしれません。それでも流速は1ノット前後にとどまっており、黒潮の影響は予測通り小さかったようです。海面下の流速(黒線、313mでの流速)を見ると、1ノット前後を保っており、これは予測通りでした。

図2: 「ちきゅう」の観測した10月24日午前9時から11月9日午前9時までの流速(ノット)の時系列。10月31日9時からのデータが今回の追加分。赤線は15m深の流速。黒線は313m深の流速(作業や移動の影響を受けていると考えられる時期のデータは除いた)。


黒潮の位置

黒潮の位置を支援船のデータから確認しておきましょう。図3は、11月7日の、[左上]「ちきゅう」と支援船1の航路、[右上]その航路に対応する緯度位置(縦軸)と観測された海面近く(深さ15m)の流速の大きさ(ノット、横軸)、[下]1日の中での時間(横軸)と流速(ノット、縦軸)を見たものです。

この日、支援船1(緑線)は、掘削地点の北の海域を移動し、流速を観測しています。その際、黒潮中心と考えられる4ノット近くの流速を横切っています(図3下)。その緯度位置を見ると、北緯33度よりも北です(図3右上)。黒潮の中心はこのあたりの緯度を流れていたことがわかります。黒潮の中心は掘削地点(★)からは遠く、「ちきゅう」の観測している流速は図2でも見たように約1ノットです(図3下の赤線)。


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図3: 11月7日の「ちきゅう」と支援船のデータ。[左上]支援船の航路。●がそれぞれの期間のスタート地点で、▲が最終地点。赤が「ちきゅう」。緑が支援船1。黒★が掘削地点。[右上]対応する緯度(縦軸)と流速(ノット、横軸)。[下]流速(ノット)の時系列。


次回予告

次回、航海中の海流とその予測のまとめを書いて、連載:「ちきゅう」のための海流予測2を締めくくる予定です。

 


 


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「ちきゅう」のための海流予測の連載記事一覧はこちら
この連載では、流れの速さの単位として船舶でよく使われるノット(2ノットは約1メートル毎秒)を使用します。
「ちきゅう」のための海流予測特別サイトはhttps://www.jamstec.go.jp/jcope/vwp/chikyu.2016.09/です。
「ちきゅう」の観測の様子に関しては「ちきゅう」公式twitter船上レポートを参照。