2017年7月10日から9月14日の予測(7月14日発表)

黒潮は大きく蛇行した後、八丈島東付近を北上しています。房総半島では黒潮が近くを流れています。小蛇行により九州東岸から四国・足摺岬で離岸しており、室戸岬でも離岸しました。八丈島の南を流れる離岸流路が当面続くでしょう。長期的は九州東岸の小蛇行がどう動くかが注目点です。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています[1]。ここでは2017年7月10日から9月14日の予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した7月10日と7月14日の黒潮の状態です。

黒潮は、比較的大きな蛇行が発達し、八丈島の南を通った後、八丈島東付近を北上しています(図1,2)。その後、房総半島近くを流れています(図1,2、接岸傾向u[2])。黒潮から切り離される形で、東海沖には暖水渦が存在しています(図1,2)。

九州東岸から四国にかけて大きめの離岸(小蛇行2[3]離岸傾向x)が存在しています。四国・室戸岬では黒潮が接岸していましたが(接岸傾向w, 図1)、小蛇行2の東への移動にともない、離岸しています(図2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した7月10日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 7月14日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は7月19日・7月26日・8月9日・9月14日の予測です。

東海沖の大きな蛇行(離岸傾向v)は、しばらく続きますが(図3)、しだいに規模が小さくなりそうです(図4,5)。房総半島では黒潮が次第に離岸すると予測しています(図3~5)。

九州東岸の小蛇行(小蛇行2)が黒潮下流(東)への移動すると予測しています(図3~5)。小蛇行が通過する沿岸では流速の変動が大きくなります。長期的には、小蛇行2が次の大きな蛇行になる可能性があります(図6)。

図7は、7月10日から9月14日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 7月19日の予測値。

 

Fig4

図4: 7月26日の予測値。

 

Fig5

図5: 8月9日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 9月14日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7
2017年7月10日から9月14日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の蛇行はどうなるか?

この欄では黒潮蛇行の発達の様子を検証していきます。注目ポイントは、1.蛇行はどこまで大きくなるか?2.蛇行がどこに位置するか?3.次の蛇行(小蛇行2)がいつ来るか?の3つです。

まず、蛇行の大きさですが、先週よりさらに大きくなりました。図8は7月3日と7月12日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[4]。7月3日(図8上段)よりも、7月12日(図8下段)には温度が低いところが南に広がり(青矢印)、黒潮(温度の高い帯)は北緯32度(赤点線)のさらに南を蛇行しています。黒潮が北緯32度以南まで蛇行すると蛇行が大きいという目安になりますので[5]先週までの予測通り、現在の蛇行は大きいです。ただ、先週までの予測ほど蛇行が東に広がっておらず、黒潮は八丈島東付近を北上しています。

次に、蛇行の位置ですが、「ひまわり8号」海面水温を見ると、冷たい水温の海域が八丈島()まで広がり、黒潮が八丈島の南を流れていることがわかります。さらに紀伊半島では黒潮が接岸しています。典型的な黒潮大蛇行では、黒潮は八丈島の北を流れ紀伊半島で離岸しているので(2017/6/21号「2004年の黒潮大蛇行と今年(2017年)の比較」参照)、現在の大きな蛇行は典型的な黒潮大蛇行ではありません。そのため、典型的な大蛇行のように大きな蛇行が1年以上続く可能性は低くなっています。

ただし、九州東に存在している小蛇行2の存在に注意する必要があります。この小蛇行が黒潮下流(東)に移動してきて、今の黒潮の蛇行に加わって蛇行をさらに大きくしたり、別の大きな蛇行に発展する可能性があります。「ひまわり8号」海面水温を見ると、7月3日(図8上段)よりも7月12日(図8下段)の方が、小蛇行2のために冷たくなっている海域が東に広がっており、小蛇行が東に進み始めていることがわかります。最新の予測では、今の蛇行は弱まり、小蛇行2が移動してきて次の大きな蛇行になる可能性が出ています(図6)[6]。とは言え、小蛇行2が近づいてくるのまだ先の話であり、今の蛇行を引き続き注意深く見ていきます。

Fig8

図7:7月3日と7月12日に「ひまわり8号」で観測された海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。

  1. [1]Sentinel-3Aの海面高度計のデータを取り入れるなど、予測システムの更新を今週行いました。
  2. [2]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字u,w,,が接岸傾向で、青字v,x,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、例えば離岸傾向xが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  3. [3]現在の東海沖の離岸の元となった小蛇行と区別するために小蛇行2と呼んでいます。
  4. [4]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。鹿児島県水産技術開発センター和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  5. [5]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  6. [6]2013年にも、2回蛇行が大きく発達して、2回目の蛇行は黒潮大蛇行の発生か?ということがありました。2013年の蛇行に関しては、2017/7/5号”2013年の「黒潮大蛇行」?”で解説しています。


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。