黒潮大蛇行は継続するでしょう。黒潮大蛇行を作っている冷水渦は東に移動する気配がなく、いぜんとして強さを保っています。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(2週間先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは8月15日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1・2は7月15日・8月15日の予測です。
東海沖の典型的な黒潮大蛇行が続くでしょう。記録が確かな1960年代後半以降では、史上3番目の長さの黒潮大蛇行になっています(「黒潮大蛇行が過去3番目の長さに」)。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい、(2)紀伊半島・潮岬での離岸、(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。
蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[1]。流れを見ると、北緯32度を越えて黒潮が大きく蛇行しています(A)。予測では、大きな蛇行はまだ続きます。先週記事の図2では大蛇行の南下が小さくなっていましたが、そうなったとしても8月上旬の一時的な現象のようです(図3のアニメーション参照)。
黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[2]。
黒潮は八丈島の北を流れています(C)[3]。今後も八丈島の北を通過する流路が続くと予測しています。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動すれば、黒潮大蛇行が終わりに向かうことも考えられますが、そのような気配はありません[4]。
九州東で離岸(小蛇行 D)が大きめになると予測しています。小蛇行の発達によっては黒潮の流路に影響を与える可能性がありますが、先月の予測検証で見られるように、長期予測モデルは小蛇行を過大に予測する傾向があります。
図3は、6月16日から8月15日までの予測をアニメーションにしたものです。
黒潮の現状と短期の予測については黒潮短期予測をご覧ください。
図3: 2019年6月16日から8月15日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図4は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[5]。黒太線が現在の推定値で、1月からほぼ横ばいが続いています。最新の予測(赤線)は、先週の予測(黒点線) より上方修正になっています。前月の予測検証のように、長期予測モデルは下降を予測しすぎる傾向があります。また、たとえ予測通り7月から下降したとしても、値は0から遠く、黒潮大蛇行はまだ強く長く続くと考えられます。
- [1]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [2]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [3]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、八丈島の潮位が高くなっており、黒潮が八丈島の北を通過していることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [4]「黒潮大蛇行はまだまた続く!? (2019年春の状況)」もご覧ください。↩
- [5]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。