最近の水温の状況(2019/9) 高い海水温上を台風15号が通過

最近の水温の状況

先月から今月にかけての日本水温の状況を見てみます。

図1は、8月15日と9月6日の海面水温の平年との差を見たものです[1]。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。図2は、同じく8月15日と9月6日の、水深100mの図です。水深100mでも海面と同じ変化が見られれば、水温の平年との差が天気だけでなく海流の影響を受けている可能性が高くなります。

8月15日の後には台風13号と台風15号が日本に近づきました。9月6日は、台風15号が日本に上陸する以前の状況です。8月15日の日本南方の海水面温度(図1上段)は、台風の影響で平年より低い状況でしたが(先月の記事「最近の水温の状況と台風の影響(2019/8)」参照)、9月6日までには水温が上昇し(図1下段)、平年より高い水温になっていました。台風15号はこの高い水温上を通過しており(図1下段、緑線)、強い勢力で日本に上陸した一因だと考えられます。海面下の水温を見ても平年より高めであり(図2下段、緑線)、水温が下がりにくい状態だったとも言えそうです。

海面水温が高く、黒潮大蛇行による水温低下が9月6日の海水面温度では見えにくい状況です(図1下段A)。これは黒潮大蛇行が消えてしまったわけではなく、水深100mの図(図2)では、しっかり残っています。ただし、8月には黒潮大蛇行をつくる渦が弱くなったため(黒潮長期予測の記事参照)、水温の低さは8月15日(図2上段A)に比べて9月6日(図2下段A)は小さくなっています。

北海道から東北の東方沖で見られる平年より特に高い温度(B)は、海面(図1)だけでなく水深100m(図2)でも見られることから、海流の影響を受けていることがわかります。「暖水渦の隙間を通る親潮の水 (親潮ウォッチ2019/9)」で解説したように、黒潮からの暖水渦の影響です。

今後の日本周辺の水温については、姉妹サイトの「季節ウォッチ」も参考にしてください。

Fig1

図1: 海面温度の平年との差(℃)。[上段]2019年8月15日。[下段] 2019年9月6日。台風11,13,15号の経路を加えた。台風経路データはデジタル台風から入手した。

 

Fig2

図2: 水深100mの水温の平年との差(℃)。[上段]2019年8月15日。[下段] 2019年9月6日。図1と同じく、台風の経路を加えた。

台風の影響

9月6日の後の台風15号による海洋への影響は、今週の黒潮短期予測記事の図で見ることができます。先月の記事で解説したようにJAXAのサイトを活用することでも見ることができるので、興味ある方はいろいろお試しください。

  1. 人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAを比較するサイト
  2. JCOPE-T DAの水平分布と深さ(鉛直)方向の分布を可視化するサイト
  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2018年の平均を使っています。JCOPE2M再解析データは学術研究利用では無償で公開しています。