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研究者コラム

軽石は遠く離れた火山からのメッセージボトル

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みなさんは2021年に沖縄など全国各地に大量の軽石が流れ着いたことを覚えていますか?

軽石は、火山からマグマが吹き出す時にマグマ中に含まれていた水やガスが溶けきれなくなって、出てきたたくさんの泡のあとが残る石です。中に泡を持つことで密度が軽くなり、水に浮くこともあります。

全国各地に流れ着いた大量の軽石は、2021年8月に小笠原諸島にある海底火山「福徳岡ノ場」が大噴火を起こし、生み出された軽石が海流に乗って1000km以上も離れた場所までやってきたものでした。

海面に顔を出していない海底火山は、活動状況を調べることが難しいです。
火山から出てくるガス成分などが海水と反応して海水の色が変わった「変色水」や、海面にガスが泡として出てくるような現象が見られれば、火山の活動が活発になっている目印となることがあります(図1)。

図1 2022年8月24日 福徳岡ノ場の真上の海面(Yoshida et al., 2022; YK22-15航海による)
図1 2022年8月24日 福徳岡ノ場の真上の海面(Yoshida et al., 2022; YK22-15航海による)

また、噴火の様子が水中を伝わる音波で見えることもあります(【福徳岡ノ場の噴火】-長距離水中音響観測がとらえた福徳岡ノ場の噴火-)。
軽石が大量に浮いているのが見つかったとしたら、どこか見えない海底で火山が噴火したという目印となるでしょう。

小規模な噴火でも軽石が遠くまでやってくることがある

2021年の福徳岡ノ場のケースは、噴火の規模も国内では戦後最大級、生み出された軽石も非常に大量でした。軽石は漂流している間にお互いにぶつかって削れたり割れたりして量を減らしていくと考えられています。福徳岡ノ場の大量の軽石は、1000km以上の長旅をしてもなお多くの軽石が残ってしまったのでした。

しかし、噴火で生み出された軽石の量が少なくても、長い距離を旅した軽石が漂着する様子を確認できる場合があることがわかってきました。

2024年の春から夏ごろに、日本各地の海岸で真っ黒から茶色の軽石が見つかるようになりました(図2)。この軽石は大きいものでは60cmほどの大きさのものも見つかっており、手のひらサイズのものも多く漂着するという特徴がありました。

図2 木切れなどと一緒に流れ着いた黒い軽石(2024年8月2日 石垣島)
図2 木切れなどと一緒に流れ着いた黒い軽石(2024年8月2日 石垣島)

JAMSTECで実施した漂流シミュレーションや協力機関と共同で実施した化学組成分析の結果、これらの軽石は2023年10月~11月に小笠原の硫黄島沖の噴火で生まれたものだと判明しました(図3:Hiramine et al., 2025)。硫黄島の噴火は当時ニュースなどでも取り上げられましたが、噴火規模自体は決して大きなものではなく、生み出された軽石も多くはありませんでした。

しかし、軽石の漂流は全国の海岸で確認できるような広がりを見せました。ちなみに硫黄島は今年(2025年)1月や、9月にもマグマを噴出する噴火を見せています。この時の噴出物もいずれ私達の身近な海岸へやってくるのかもしれません。

図3 硫黄島翁浜沖の噴火で一時的に形成された新島。この島はしばらくして波蝕で消えた(2023年11月10日 海上保安庁撮影の写真に追記、海域火山DBより)
図3 硫黄島翁浜沖の噴火で一時的に形成された新島。この島はしばらくして波蝕で消えた(2023年11月10日 海上保安庁撮影の写真に追記、海域火山DBより)

過去の軽石漂流の事例を見てみると、噴火の規模と軽石の到達距離は、実はあまり関係がない可能性があります。フィジーやトンガで発生した大規模な軽石漂流では、噴火直後に海が一面埋まるほどの軽石が見られ、渦状の海流に捕まって色々な方角へ広がっていったことがわかっています。

小笠原海域から沖縄あたりの緯度には、西向きに比較的弱い黒潮反流という海流が流れており、福徳岡ノ場や硫黄島から沖縄にやってきた軽石はこの海流に乗ることで沖縄にたどり着き、その後北に向かう黒潮に乗って九州~本州の各地へと広がったと考えられています(図4)。

図4 伊豆・小笠原弧で活動を見せる火山と主な海流の位置関係
図4 伊豆・小笠原弧で活動を見せる火山と主な海流の位置関係

JAMSTECで行われた漂流シミュレーション研究の結果でも、小笠原諸島の火山で生み出された軽石は一定数が沖縄へたどり着くことが示されています(図5)。小笠原と沖縄の間のようにわかりやすい「道」がある場合、噴火が小規模であっても私達の住む陸地まで軽石がやってくることがある、ということがわかってきました。みなさんの身近な海岸にもこれらの軽石が流れ着いているかもしれません。

図5 Nishikawa et al., 2023で、三宅島と西之島からそれぞれ軽石粒子を放出して、どのように広がっていくかを計算した漂流シミュレーション結果。★の位置が火山で、赤が軽石の漂流経路。三宅島のような伊豆諸島の火山からだと黒潮で東向きに流れ去る一方で、西之島のような小笠原の火山の場合、一定数が西方向に向かい、沖縄などへ流れていくのがわかる
図5 Nishikawa et al., 2023で、三宅島と西之島からそれぞれ軽石粒子を放出して、どのように広がっていくかを計算した漂流シミュレーション結果。★の位置が火山で、赤が軽石の漂流経路。三宅島のような伊豆諸島の火山からだと黒潮で東向きに流れ去る一方で、西之島のような小笠原の火山の場合、一定数が西方向に向かい、沖縄などへ流れていくのがわかる

白い「麩菓子軽石」の旅

2024年の夏頃に、今度は白くてフワフワした「麩菓子」のような軽石が沖縄などで観察されるようになりました(図6)。この“麩菓子軽石”をJAMSTECで分析したところ、2023年の秋に伊豆諸島南部の海上でまとまった量が浮いているのが見つかった軽石(軽石筏)が漂流してきたものだということがわかってきました。小規模な軽石筏でしたが、硫黄島の軽石と同様に黒潮反流に乗ってたどり着いたようです(Yoshida et al., 2025)。

図6 新しく漂着した白い「麩菓子」のような軽石(2025年2月18日、沖縄)
図6 新しく漂着した白い「麩菓子」のような軽石(2025年2月18日、沖縄)

2023年10月8日に伊豆諸島の孀婦海山と呼ばれる海山で地震活動が発生し、太平洋沿岸に届くような津波が起きました(Fujiwara et al., 2024)。この時の活動は海面からは見えない深海の火山活動だったと考えられており、地震活動の約2週間後に海上保安庁が孀婦海山や鳥島の近くの海域で帯状に並んだ軽石筏を見つけています(図7)。

この軽石は、気象庁の観測船「啓風丸」によって採取され、産業技術総合研究所・東京大学で分析が行われました。すると、福徳岡ノ場や硫黄島などの近年漂流が見られた軽石とは別物であることがわかりました(Iwahashi et al., 2025)。

火山活動と近い時期に近い場所で見つかった新しい軽石ですし、麩菓子軽石はその火山活動で生まれたものだろう、と思うところですが、JAMSTECが行った漂流シミュレーションは意外な結果を示しました(図7)。

図7 2023年10月8日に孀婦海山で起きた地震の震源(一部)、10月20日に海上で見つかった軽石筏の分布、シミュレーションによって推定された10月14日~17日ごろの軽石の位置。軽石が北から南下してきていたことを示す
図7 2023年10月8日に孀婦海山で起きた地震の震源(一部)、10月20日に海上で見つかった軽石筏の分布、シミュレーションによって推定された10月14日~17日ごろの軽石の位置。軽石が北から南下してきていたことを示す

軽石筏の位置を海流や風の情報からシミュレーションで「過去へ」遡ってみると、軽石は火山活動があった孀婦海山の北からやってきたことがわかりました(Kuwatani et al., 2024: 図7黄土色の範囲)。

シミュレーションの結果を見ると、どうやら麩菓子軽石は孀婦海山より北の場所で、たまたま近いタイミングで生まれた軽石のようです。ではその時期に軽石を放出するような海底火山噴火が周辺で見つかっているかというと、見つかっていないのです。確かにそれなりの量の麩菓子軽石が見つかっているのに、どこから来たのかはよくわからないのです。

津波を引き起こした孀婦海山の過去の火山活動は、これまできちんと調査されたことがなかったこともあり、JAMSTECでは2025年3月および9月に海底広域研究船「かいめい」を使って海底地質調査を実施しました。

調査では、最近の噴火で放出されたと思われる巨大な軽石が海山の中に沈んでいることもわかりました(図8)。また、海山の周辺ではきれいに堆積層が出ている小崖が見つかり、地震・火山活動に関連して地形変化が起きていた可能性も見えてきました(図9)。孀婦海山に沈んでいた軽石は麩菓子軽石とは別物なのか、そして津波を引き起こした火山活動はどのようなものだったのか、これから分析を進めていく予定です。

図8 孀婦海山の海底地質調査で見つかった巨大な軽石(KM25-02航海 Leg2 による)
図8 孀婦海山の海底地質調査で見つかった巨大な軽石(KM25-02航海 Leg2 による)
図9 孀婦海山の北東斜面で見つかった、高さ約2mの小崖地形。地層断面が綺麗に切り立っていることから、出来てまだ新しいと思われる(KM25-09航海による)
図9 孀婦海山の北東斜面で見つかった、高さ約2mの小崖地形。地層断面が綺麗に切り立っていることから、出来てまだ新しいと思われる(KM25-09航海による)

今回のコラムに関連するJAMSTECの研究成果

[新作] 孀婦海山付近から沖縄へやってきた「麩菓子軽石」の化学組成分析研究
Yoshida, K.K., Hiramine, R., Ishimura, D., Sato, T., & Maruya, Y. (2025) White pumice raft drifted to the Ogasawara and Nansei Islands after the October 2023 earthquakes in the southern Izu Islands. Geochemical Journal. https://doi.org/10.2343/geochemj.GJ25013

[新作]黒い軽石の化学組成分析・漂流シミュレーション研究によって硫黄島起源と特定した研究
Hiramine, R., Ishimura, D., Nagai, M., Miwa, T., Nishikawa, H., Kuwatani, T., Sato, T., & Yoshida, K. (2025) Pumice Drifting from Ioto Volcano in the Izu–Bonin Arc to the Nansei Islands, Japan. Island Arc, 34, e70020. https://doi.org/10.1111/iar.70020

福徳岡ノ場の噴火を水中音響観測で捉えた研究
Metz, D. (2022) Analysis of International Monitoring System hydrophone triplet data: Identifying the August 2021 eruption at Fukutoku-Okanoba, 24.3°N Bonin Arc. Acoustical Science and Technology, 43, 125-128. https://doi.org/10.1250/ast.43.125

漂流シミュレーションで色々な火山から出た軽石の漂流先を調べる研究
Nishikawa, H., Kuwatani, T., Tada, N., & Kayama Watanabe, H. (2023). Simulated distributions of pumice rafts in Japan following eruptions at volcanic islands and submarine volcanoes. Progress in Earth and Planetary Science, 10, 21. https://doi.org/10.1186/s40645-023-00552-4

2023年10月に孀婦海山で発生した地震の詳細解析や地形変化に関する研究
Fujiwara, T., Imai, K., Obayashi, M., Yoshida, K., Tada, N., Obana, K., Fujie, G., Ono, S., & Kodaira, S. (2024) The Sofu seamount submarine volcano present in the source area of the October 2023 earthquakes and tsunamis in Japan. Geophysical Research Letters, 51, e2024GL109766. https://doi.org/10.1029/2024GL109766

2023年10月に孀婦海山付近で見つかった軽石筏の遡り漂流シミュレーション研究
Kuwatani, T., Nishikawa, H., Tanaka, Y., Watanabe, H., Tada, N., Nakano, A., Tamura, Y., Ono, S. (2024 preprint) Estimating the Source of Floating Pumice Found near Torishima Island, Japan: A Back-Tracking Drift Simulation Approach. https://doi.org/10.22541/essoar.172745007.73613799/v1

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