海はなんでしょっぱいのでしょうか?あたり前だと思っている裏側には、実は科学的に深いテーマが見えてきます!このシリーズでは「海に関する素朴なギモン」を地球環境部門の川口慎介主任研究員がわかりやすく解説します。実はこのギモン、最新の宇宙探査にもつながる深遠なテーマなんです!(取材・構成/岡田仁志)
<素朴なギモン> 海の水は、なんでしょっぱい?
地球誕生から数億年後に……
わたしたちが口に入れて「しょっぱい」と感じるのは、その食べ物や飲み物などに「塩化ナトリウム」が入っているからです。食事に使う「食塩」も、この塩化ナトリウムからできています。塩化ナトリウムは、「塩素」と「ナトリウム」という元素でできています。
地球が誕生して数億年が経ち、地球に今のような海ができたとき、海の水に塩素とナトリウムがたくさん溶けこみました。
なぜ、ナトリウムと塩素が溶けたのか?
塩素とナトリウムが海水にたくさん入っているのは、どちらの元素も水に溶けやすい性質だからです。
たとえば、地球の岩石には「鉄」という元素がたくさんありますが、こちらは水にほとんど溶けません。だから、塩素やナトリウムと比べて、わずか百万分の一ほどしか海水には入っていないのです。
このように、元素それぞれの特徴によって、海水に溶けられる量は大きく違います。でも、どの元素も水にまったく溶けないわけではないので、ほんの少しずつですが、海水にはすべての元素が溶けこんでいるのです。
海水のなかで塩素とナトリウムの次に多いものは
海の水に溶けている元素のうち、塩素とナトリウムの2つの次にたくさん入っているのは、「マグネシウム」です。これは、豆腐をかためるのに使う「にがり」にたくさん入っている元素です。
もし、マグネシウムが塩素やナトリウムより水に溶けやすい性質だったら、海の水は「にがく」なったかもしれません。
土星の衛星「エンセラダス」の海の水の味は?
どの元素がどれぐらい海に溶けこむかは、水の温度や周辺の環境によって変わります。
地球は約46億年前に生まれたと考えられていますが、そのときから今まで、地球の環境は大きく変わってきました。ですから、昔の海と今の海では、温度や性質が違ったかもしれません。もしかしたら、何十億年も前の海の水をなめると、ものすごくしょっぱくて苦かったかもしれないのです。
地球以外の惑星の「海」も、しょっぱいかどうかわかりません。
地球のような海はまだほかの星で見つかっていませんが、土星にある衛星「エンセラダス」の地下には液体の水がたくさんあると考えられています。
でも、エンセラダスの地下にある水がしょっぱいかどうかは、まだわかりません。海のような大きな水たまりが、いつでも、どこでも「しょっぱい」とは限らないのです。
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取材・構成 岡田仁志
取材協力:地球環境部門 海洋生物環境影響研究センター 海洋環境影響評価研究グループ 川口慎介 主任研究員