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海と地球の“深”知識

海の水はどうしてなくならない?――地球の水、一番多いのは海水ですが、二番目は……

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海のゆったりとした風景はいつ見てもいいものです。でも、この海、なんでなくならないんでしょうか? 蒸発してしまったり、水が地中に吸い込まれたり、そういうことは起こらないんでしょうか。そんな、人に聞かれたら答えがよくわからない海に関する素朴なギモンを地球環境部門の川口慎介主任研究員がわかりやすく解説します。(取材・構成/岡田仁志)

<素朴なギモン> 海の水は、なぜなくならない?

海の水も、蒸発するし、地球のなかに消えている!

たしかに、雨がたくさん降って大きな水たまりができても、しばらくするとなくなります。なくなる理由のひとつは、水が地面にしみこむことです。もうひとつの理由は、太陽の熱であたためられて、蒸発するからです。

それなのに、水たまりと違って、海の水はなくなりません。それはなぜでしょうか?

それは、蒸発した水も、また海にもどってくるからです。

蒸発した「水」はどこにいくのか?

まず、蒸発した水がどうなるかを見てみましょう。

海から蒸発した水は、水蒸気になって空まで上がり、雲をつくります。海の上にある雲から雨が降れば、そのまま水が海にもどることになります。山の上にある雲から降った雨は、やがて川になって、海に流れこみます。蒸発した水は、そうやって海にもどるのです。

あたためられた海水が蒸発して雲になり、雲が冷えると雨になる(図:鈴木知哉)

海の水は、地球の内部にしみこんでいく

海の水は、じつは海底をとおって地球のなかにも侵入していきます。

海の底は「プレート」とよばれる岩でできています。それよりもっと深いところには、熱いマントルが流れています。地球のなかは深いところほど温度が高いので、岩石でも柔らかくなってしまうのです。

海底の「プレート」は、ゆっくりと動いています。この動きを「プレートテクトニクス」といいます。プレートテクトニクスによって、海底の岩石は地球の内部に引き込まれていきます。このとき、岩石に染みこんだ海水も一緒に、地球の内部に引き込まれます。

地球にしみこんだ水は、どこから出てくる?

では、地球のなかに染みこんだ水はどうなるのでしょう。

地球の内部まで運ばれてきた水は、やがてプレートから絞り出されます。水によって岩石がとけやすくなり、マグマになります。マグマはやがて地球の表面に向かってあがっていき、火山の噴火を起こします。

火山の中にはマグマになる時に加わった水も含まれているので、噴火によって、それらの水も地球表面に飛びだします。噴火したのが海底火山なら、飛びだした水はそのまま海にもどるでしょう。地上にある火山が噴火したときは、まず熱い水蒸気になって飛びだします。それが雲をつくり、雨を降らせるので、さっきの話と同じように、やがて海にもどることになるのです。

プレートの動きといっしょに、地球の内部に取り込まれた海水は、火山のマグマと一緒に空気中に放出される(図:鈴木知哉)

地球の水、海の次に多いのは……

このように、地球では、海の水だけでなく、空気や岩石など、いろいろなものがかたちを変えながらグルグルと循環しているので、どこか一部分を見ただけでは、全体のことがわかりません。どこかで何かが減っているように見えても、全体の量は変わっていないのです。

地球の水は、海、川、湖などでは液体ですが、氷という固体でも存在しています。いちばんたくさん水があるのは海で、地球の水の97%以上があります。その次にたくさん水があるのは、川でも湖でもありません。ヒマラヤやアルプスなどの寒いところにある「氷河」が、2番目にたくさんの水をためこんでいます。

また、動物や植物の中にも、水が含まれています。わたしたち人間の体は、およそ70%が水でできています。その水も、大きな循環の中に入っています。昔は海にあった水が、食べ物や飲み物になってわたしたちの体にもなり、また海にもどっていくのです。

川口慎介主任研究員

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取材・構成 岡田仁志

取材協力:地球環境部門 海洋生物環境影響研究センター 海洋環境影響評価研究グループ 川口慎介 主任研究員

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