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海域地震火山部門

テフラ給源同定システム(仮)

(広域)テフラの出自を統計的手法で決める

火山が大規模な噴火を起こしたとき,噴出した火山灰や軽石が非常に広い範囲に降ることがあります.そのような降下物(テフラ)は,時に日本列島を覆うような広い範囲に降り積もっており,テフラを調べることで過去の噴火の規模を推定したり,テフラ層そのものを地層の年代決定に使ったりと,地球科学の研究を行う上で非常に重要な役割を果たします.

地中や海中から得られたテフラがどの火山の噴火によるものかは,テフラに含まれる火山ガラスや鉱物の化学組成,ガラスの屈折率や形態などの情報を総合的に評価することで調べられてきました(例えば古澤,1995).

私達の研究グループでは,テフラの化学組成が国内火山由来テフラ組成84試料からなるデータベース(Kimura et al., 2015)に含まれる「どのテフラ」の化学組成と似通っているのかを,統計的に評価する手法を開発しました(桑谷ほか,2022 JpGU発表).更に,開発手法を用いて誰でも簡単に,化学組成からテフラの起源を推定する事のできる仕組み(テフラ給源同定システム)を開発し日本の火山学研究発展のために公開し,多くの方に使っていただきたいと考えています.

システムは将来的にどなたでも使っていただける形で提供する予定ですが,現在機構ではデータベース等の公開を停止しており,ユーザーに自由に使っていただける形でのシステム公開の目処が立っておりません.そこで,当面の間,システムを使用してみたいと思う方から私達がデータをお預かりして,解析結果をお返しするという形で,システムの試験運用を行います.

解析受付可能な火山灰は以下の条件を満たすものです.
・第四紀の火山灰
・Kimura et al. (2015)で報告されている主要10元素・微量33元素のデータが不足なく揃っているもの
・既に論文として公表済みであるもの


私達のシステムにご興味を持たれた方は,下記連絡先までお問い合わせください.

本システムの内容・解析依頼に関する問い合わせ先
海洋研究開発機構 海域地震火山部門
桑谷 立 (kuwatani@jamstec.go.jp)


参考文献

古澤明(1995)火山ガラスの屈折率測定および形態分類とその統計的な解析に基づくテフラの識別.地質学雑誌,101, 123-133,https://doi.org/10.5575/geosoc.101.123

Kimura et al. (2015) Origins of felsic magmas in Japanese subduction zone: Geochemical characterizations of tephra from caldera-forming eruptions <5 Ma. Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 16, 2147-2174. https://doi.org/10.1002/2015GC005854

桑谷立ほか(2022)地球化学データベースを用いたテフラ同定システムの構築.JpGU 2022.