2017年の親潮をアニメーションで振り返る (親潮ウォッチ2018/1)

 

まず最近の親潮の様子を見ています。暖水渦の影響で親潮の勢力は弱い状態です。黒潮続流は南寄りになっており、黒潮続流の北では水温が低くなっています。次に2017年の親潮をアニメーションで振り返ります。

全体的な状況

まず、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2017年12月7日と、2018年1月22日の、海面水温の平年との差を見たものです[1]。平年は1993から2012年の20年間の平均で、それより高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。

親潮周辺海域では、平年より高い海域が見られます(図1下段A)。黒潮続流の北では、平年より低い海域が見られます(B)。次の節以降で詳しく見ています。

黒潮大蛇行が現在発生しており(黒潮予測記事参照)、それにともなう冷水渦(C)で冷たくなっています。その北では東から西へ沿岸沿いに黒潮から暖水が流入しているため、関東から東海沿岸にかけて海面水温が平年よりなっています(D)。

寒い天候が続いているため、日本海では平年より冷たい海域が目立ちます(E)。対馬暖流の影響を受けて、平年より水温が高い所も見られます。北海道西方ではやや寒気の影響が弱かったため、平年より水温が高い所が見られます(F)。

Fig1

図1: 海面温度の平年との差(℃)。[上段]2017年12月7日。[下段] 2018年1月22日。

 

親潮の様子(海面)

親潮周辺の様子を詳しく見てみます。図2左は、図1下段を親潮域で拡大した図です。図2左のa~eの海域などでは平年より高くなっています。水温が高いのは海流(暖水渦)の影響だと考えられます。図2右は、対応する海面温度そのもの(色)と、流れ(矢印)です。a~eの位置に時計回りの暖水渦が見られます。暖水を運ぶ黒潮続流[2]は平年より南に位置しているために、その北では水温が平年より冷たくなっています(f)。

図2: [左図] 2018年1月22日の親潮周辺の海面温度の平年との差(℃)。[右図] 同じく2018年1月22日の海面水温(色、℃)と流れ(流線)。

親潮の様子(海面下)

海流の様子をより良くみるために、天気の影響を受けにくい海面下の水深100メートルの様子を見てみましょう(図3左図)。昨年の状況とも比べます(図3右)。昨年は、暖水渦(図3右、g)の存在で親潮が弱い状態でした(親潮ウォッチ2016/12)。今年は、それほどはっきりした暖水渦はありませんが、渦a~eの影響で親潮が南下しにくくなっています(図3左)。

去年(図3右)と今年(図3左)を比較すると、今年は黒潮続流が南寄りになっていることがわかります。

Fig3

図3: 水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(流線)。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。[左図]今年の1月22日。暖水の動きを説明するために、ピンクの太い矢印を記入。[右図] 昨年の1月22日。

1月22日からの予測

図4は、JCOPE2Mで1月22日から予測した2月4日の親潮域の水深100mの水温(左図)と、平年の水温([3]、右図)を比較しています。水温5度の等値線が親潮の勢力の指標になっています。図4右の暖水渦eが存在し、平年(図4右)の親潮第一分枝(①)と第二分枝(②)と比べて、特に第2分枝が南下しにくい予測になっています[4]

図5は、図4に対応する1月22日から2018年3月29日までの予測をアニメーションにしたものです。渦の動きの予測は難しいので、今後予測が変わる可能性があります。最新の予測は週2回更新されるJCOPE のサイトでチェックしてください。

Fig4

図4: JCOPE2Mで2018年1月22日から予測した2月4日の親潮域の水深100mでの水温(色、℃)と流れ(流線)の図(左図)と平年の水温(右図)の比較。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。

 


図5: 親潮域の水深100mでの2018年1月22日から2018年3月29日までの水温のJCOPE2Mによる水温(色、℃)と流れ(流線)の予測(左図)と、平年の水温(右図)の比較のアニメーション。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

親潮面積

JCOPE2Mによる推定によれば(図6青太線)、親潮の勢力の指標である親潮面積(図3の青枠での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)[5]は、暖水渦のため平年より(黒細線)、小さな値になっています。2017年を通して見ると春から夏頃はいったん暖水渦が解消し平年並みか平年より大きな親潮の面積でしたが、秋以降は暖水渦の影響で親潮の面積は小さくなっています。

予測(黄点線)では、小さい値が続きそうです。

Fig6

図6: 親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2016年1月から現在までのJCOPE2再解析から計算した時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。2016年10月からは、JCOPE2再解析の代わりに、新モデルであるJCOPE2Mによる値(青実線)を使用。黄点線は2018年1月22日からのJCOPE2Mによる予測。

2017年の親潮をアニメーションで振り返る

昨年2017年の親潮の変化を2つのアニメーションで振り返ります。

一つめは(図7)、海面水温の変化を見ています。JCOPE2Mで計算した海面水温(図左)と同時に、気象衛星「ひまわり8号」で観測した海面水温(図右)も図にしています[6]。JCOPE2M(図下段)のデータは、「ひまわり8号」のデータを取り入れて計算しているので、海面温度の様子をおおよそ再現できています。ただし、JCOPE2Mの分解能の問題で、細かいところでは違っているところもあります。この点に関しては、現在分解能が高い新しいモデルを公開に向けて開発していますのでご期待ください。一方で、JCOPE2Mの強みは、雲によって「ひまわり8号」が観測出来ないときもデータがあることです。また、「ひまわり8号」では観測できない、流線の計算(図7左の矢印)も行っています。

2つめは(図8)、水深100mの水温(色)と流速(矢印)の図で、2017年(左)と2016年(右)を比較しながらアニメーションにしています。

親潮は、2015年から2016年にかけて、暖水渦の影響のために極端に弱い状況が続いていました。その暖水渦の影響が2017の春にいったん弱まりました(「暖水渦の影響弱まる (親潮ウォッチ2017/04)」)。しかしながら、2016年ほどでないにしろ2017年秋頃から親潮が弱まったのではないかと見ています(「親潮はそれほど強くない (親潮ウォッチ2017/09)」、「親潮の勢力は引き続き弱い (親潮ウォッチ2017/12)」)。


図7: 海面水温の2017年1年間の比較のアニメーション。左図はJCOPE2Mの解析値から(1日平均)。右図がひまわり8号の観測から作成された海面水温。左図にはJCOPE2Mの流れも流線しめしている。

 


図8: 親潮域の水深100mでの2017年(左)と2016年(右)一年間の水温(色)と流れ(流線)の比較のアニメーション。親潮域の指標として水温5度に赤細線で等値線をひいてある。2017年のデータはJCOPE2M、2016年の値はJCOPE2再解析の値を使用した。

2018/3/12追記

図8動画の左部分が、2018/3/7放送・NHKニュースウォッチ9の特集「~あの日から7年~東北の海に潜ると・・・・がれきとの戦い続く」で使用されました。

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを、昨年や平年の値はJCOPE2再解析を使用しています。
  2. [2]黒潮続流については、「黒潮の続き、黒潮続流(親潮ウォッチ2016/02)」参照。
  3. [3]1993から2012年の平均。
  4. [4]親潮第一分枝・第二分枝については「親潮はどんな流路になっているの?(親潮ウォッチ2015/7)」の解説参照。
  5. [5]親潮面積については、「親潮が記録的なあたたかさ(親潮ウォッチ2015/9)」で解説しています。
  6. [6]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。「気象衛星「ひまわり8号」で見た親潮2 (親潮ウォッチ2017/03)」の解説参照。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら

黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。週に2回更新される最新の親潮の解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

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美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。