2019年8月の予測を検証します

毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。予測通り黒潮大蛇行が続いていますが、予測していた渦のちぎれは見られませんでした。

予測と実際(長期予測)

今回は7月31日号の、7月26日から予測した8月23日までの結果を検証します。7月31日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1左は、7月26日から予測した8月23日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる8月23日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、7月26日から8月23日までのアニメーションにしたものです。

7月26日の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。

一方で、黒潮大蛇行から渦がちぎれる可能性があると予測していましたが(図1左A)、今の所そのような現象はおこっていません(図1右)。また、黒潮の一部が八丈島の南を流れる予測になっていましたが(図1左B)、実際にはより八丈島の北を流れています(図1右)。

九州東岸から四国にかけても離岸が続くことを予測できていました。ただし予測では黒潮が紀伊半島潮岬に寄りすぎだったようです(図1左C)。

Fig1

図1: [左]7月26日から予測した8月23日の予測値。[右]観測値を取り入れて推測した8月23日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。

 


図2: 7月26日から8月23日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、7月31日号の7月26日からの予測による1か月の冷水面積の変化です。8月に入ってからの急落を予測していました。予測は当たっていましたが(黒線)、実際の下降は予測よりも大きかったです。

黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約2年1か月[2]たっており、記録が確かな1960年代後半以降では、史上3番目の長さの黒潮大蛇行になっています(「黒潮大蛇行が過去3番目の長さに」)今回より長い大蛇行は30年以上前の1981-1984年(約2年7か月)までさかのぼります。

FIg3

図3: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列で黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した実際の値(解析値)。点線が7月26日から8月23日までの予測。参考のために前回の大蛇行が終了した2005年の時間変化を薄い線で重ねた。

 

  1. [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。
  2. [2]2017年8月も1か月に加えて数えてます。気象庁に合わせた数え方です。