毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。4月は予測通り、黒潮大蛇行が続きました。予測通り黒潮大蛇行は続いています。小蛇行の東への移動は予測よりも早いようです。 |
予測と実際(長期予測)
今回は2020年5月6日号の、4月30日から予測した5月20日までの結果を検証します。
5月6日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。
図1左は、4月30日から予測した5月20日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる5月20日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、4月30日から5月20日までのアニメーションにしたものです。
5月6日号の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸している(C)こと、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました(A)。
黒潮が八丈島の北を流れる流路が継続すると予測していました(図1左B)。その予測は当たっています(図1右)[2]。
九州の東の小蛇行が東に移動することは予測していましたが(図1左、D)、実際は予測よりも東への移動が早かったようです。その結果、四国・足摺岬の離岸は予測よりも早く始まりました。
図2: 2020年4月30日から5月20日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)
大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。長期予測モデルJCOPE2Mをアップデートし、指標を水温3.3℃以下に変更しています。
図3の点線は、2020年4月15日号の4月30日からの予測による1か月の冷水面積の変化です。ほぼ横ばいを予測していました。変動のしかたに違いはあるものの、実際(黒線)もほぼ横ばいでした。
黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約2年10か月[3]になっており、記録が確かな1960年代後半以降では、史上最長の1975-1980年(約4年8か月)に次ぐ長さになっています(「黒潮大蛇行の歴史」参照)。
予測と実際(短期予測)
今回は先週の5月18日から予測した5月24日の予測を検証します。図4上段は、5月18日から予測した5月24日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる5月24日の状態です。
おおむね良く予測できていました。四国・室戸岬への黒潮の接近も予測していました。ただ人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAを比較するサイトで比較すると、黒潮が蛇行した後、熊野灘で接岸する位置は西に寄りすぎているようです。
- [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩
- [2]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い状態が続いており、黒潮が八丈島の北を流れる流路を示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [3]2017年8月も1か月に加えて数えてます。気象庁に合わせた数え方です。↩