高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(10日先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは3月25日までのJCOPE-T DAによる短期予測を解説します。短期予測では、黒潮の沿岸への影響がテーマです。
現状と予測
図1・2・3はJCOPE-T DAで計算した2021年3月17日・3月21日・3月24日の黒潮の状態です(1日平均)。水位0.3mの位置に太線を黒潮の流軸の推定値として加えています。詳しくは「海洋速報」黒潮流軸とモデル予測の比較の解説をご覧ください。
黒潮大蛇行[1]が続いています(長期予測も参照)。紀伊半島の潮岬(B)で大きく黒潮が離岸しています。以前に大蛇行からちぎれた渦(A)は九州南東にあり、黒潮にくっついています(図1)。くわしくは、黒潮大蛇行の入れ替わり (2020/9-2021/2)をご覧ください。
黒潮は大蛇行(G)から、西に流れて時計回り渦のようになっている流れ(E)と、八丈島付近からそのまま東にむかう流れ(F)に分かれています。時計回りの渦は暖水渦として黒潮から切り離されると予測しています(図3)。黒潮が主に八丈島の南を流れるようになっており、典型的な黒潮大蛇行とは異なっています[2]。八丈島の潮位の持つ意味は、「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でも解説しています。長期予測は八丈島の北を通る流路に戻ると予測しています。
四国・室戸岬(C)と足摺岬(D)では黒潮が離岸しています。黒潮から分岐した時計回りの暖水が足摺岬・室戸岬へと流れます(図1~3)。宮崎県沖の時計回りの流れは検証記事で見ています。
図4は3月15日午前9時から3月25日午前9時までの予測のアニメーションです。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。
JCOPE-T DAの予測は毎日更新されており、最新の予測はJAXAのサイトをご覧ください。図の見方は「JAXAと共同で新しい海洋予測を開始」で解説しています。

図1: 2021年3月17日の予測値(日平均)。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C)。1度毎の等温線も薄く加えた。黒太線は日平均海面水位0.3mの等値線で、黒潮流軸の指標。青丸(●)が八丈島の位置。クリックすると拡大します。
図4: 2021年3月15日午前9時から3月25日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。黒太線は日平均海面水位0.3mの等値線で、黒潮流軸の指標。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。
- [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら。↩
- [2]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、高かった八丈島の潮位が下がってきています。これは八丈島に黒潮が近づいていることをしめしています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。↩
JCOPE-T DAは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測研究センター(EORC)と共同で、土曜日を除く毎日更新を行っています(解説参照)。