黒潮大蛇行が始まって約3年7か月を超えています。黒潮が八丈島の南を流れる非典型的な大蛇行になっていますが、八丈島の北を流れる流路に戻ると予測しています。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(10日先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは5月21日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2021年3月12日の状態の推測値、図2・3は4月21日・5月21日の予測です。水位0.3mの位置に太線を黒潮の流軸の推定値として加えています。詳しくは「海洋速報」黒潮流軸とモデル予測の比較の解説をご覧ください。
黒潮大蛇行が続いています(図1)。紀伊半島・潮岬(B)で大きく離岸しています。一時中断の期間を含めれば黒潮大蛇行は約3年7か月を越えています。記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さです(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照)。以前の大蛇行を作っていた渦Aは九州の南東で黒潮にくっついています。一連の変化については、「黒潮大蛇行の入れ替わり (2020/9-2021/2)」をご覧ください。
黒潮が八丈島の南を流れており、非典型的な大蛇行になっています[1]。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」で解説しています。八丈島の南を通る流路が長期化すれば黒潮大蛇行が終わりに向かいますが、黒潮が八丈島の北を通る流路に戻ると予測しています(図2,3)。
大蛇行の渦(D’)の他に九州東から四国南に別の渦(小蛇行, A)が残り不確実要素になっていますが、大蛇行がまだ継続するという予測になっています。
図4は、2021年3月12日から今年5月21日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 2021年3月12日から5月21日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
潮岬での接岸
串本と浦神の日平均潮位差が大きいことは、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸していることを意味します[2]。図5は気象庁のデータから作成した串本・浦神の潮位差の時間変化です。黒潮大蛇行が始まった2017年後半から潮岬で黒潮が離岸していたため低かった潮位差は、昨年10月に黒潮が接岸したため急上昇しました。潮位差は再び下降しており、黒潮が離岸していることをしめしています(図1)。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図6は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[3]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。
黒潮大蛇行を作る渦は昨年の夏以降に渦がちぎれたことで弱まっていましたが、再び強さを取り戻しています。(黒太線)。最新の予測(赤線)は先週の予測(黒点線)と同程度です。今後は渦が弱まると予測していますが、それでも昨年夏以前の強さが保たれます。
- [1]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、高かった八丈島の潮位が下がっています。黒潮が八丈島の南を流れていることをしめしています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。↩
- [2]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [3]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。