黒潮親潮ウォッチでは今年も様々なトピックを扱ってきました。黒潮親潮ウォッチの過去の記事一覧はこちら(リンク)で見ることができます。今週は、今年の話題を3大ニュース[1]として振り返ります。
1) 黒潮大蛇行が12年ぶりに発生
今年は、前回の2004-2005年以来12年ぶりの黒潮大蛇行が発生しました。これが今年の最大のトピックでした。黒潮親潮ウォッチでも多くの記事を書いており、「黒潮大蛇行記事のまとめ」で見ることができます。
実際に黒潮大蛇行が発生したのは8月下旬から9月にかけてですが、5月31日には黒潮大蛇行になる可能性について書き始めています(「黒潮大蛇行は発生するか?」)。その後はやや複雑な経緯をたどりますが、実際に黒潮大蛇行になりました。黒潮大蛇行になるまでの経緯については、「黒潮大蛇行2017の発生を振り返る」にまとめています。
普段は意識することはないかもしれませんが、黒潮は自然や社会に大きな影響があります[2]。黒潮が違う流れに変化することは、そのことに気づくきっかけとなります。今年は私たちの研究活動をメディアに多く取り上げていただきました(取材協力一覧)。まだ黒潮大蛇行は続くと予測しており(黒潮予測記事)、 2018年も引き続きご注目ください。
2) 親潮で長く続いていた暖水渦の影響が春に消える(が、)
親潮は、2015年から2016年にかけて、暖水渦の影響のために極端に弱い状況が続いていました[3]。その暖水渦の影響が今年の春に弱まったのが(「暖水渦の影響弱まる (親潮ウォッチ2017/04)」)、親潮域での大きなニュースと言えるでしょう。
私たちの解析では、去年ほどでないにしろ再び秋頃から親潮が弱まったのではないかと見ています(「親潮はそれほど強くない (親潮ウォッチ2017/09)」、「親潮の勢力は引き続き弱い (親潮ウォッチ2017/12)」)。ただし、今年春まで存在していた暖水渦ほどはっきりと親潮をさまたげているわけないので[4]、「篤志船観測の皆様とともに ―観測と予測の相互連携を目指して―」で紹介したようなデータを使用して、実際はどうなっているかを検証していく必要があります。
親潮に関しては、月に一回、親潮ウォッチとして書いています[5]。
3) 対馬暖流が強い
去年から今年にかけて、対馬暖流が強い様子が見えました。そこで、昨冬(「対馬暖流が強く大雪?」)と今年(「対馬暖流が強く大雪?(2) 2017年晩秋」)の2回、日本海側の雪との関係の研究を紹介しながら、対馬暖流に注目してみました。現在、「対馬暖流が強く大雪?(2) 2017年晩秋」で書いた時より、日本海で平年より海面水温が高い海域は減っていますが(「親潮ウォッチ2017/12」参照)、まだ海域によっては平年より高くなっています。対馬暖流や日本海の海面水温が降雪量にどれだけ影響を与えているかついて、今後研究が進められていくでしょう[6]。
- [1]2015年と2016年は5大ニュースでしたが、今年は黒潮大蛇行の話題が1位から3位までを独占するくらいの比重が大きいので、3大ニュースとしました。↩
- [2]黒潮大蛇行以外では、「黒潮が爆弾低気圧を呼ぶ」や「黒潮の変動がウナギに影響を与える?」という話題もありました。↩
- [3]仙台管区気象台によると、「1982 年以来、これほど長期にわたって親潮面積がかなり小さい状態が続いたことはありませんでした。」とされています。
“2015~2016 年の親潮 ~三陸沖へ張り出しにくい状態が続きました~” (2017/3/21, pdf)↩ - [4]国立研究開発法人水産研究・教育機構の平成29年度第4回東北海区海況予報では、親潮は強かった(「親潮第1分枝の張り出しはやや南偏〜極めて南偏で推移した」)としています。↩
- [5]11月はお休みしました。↩
- [6]筆者(美山)は科研費基盤(A)「日本周辺の海面水温場が局所的な豪雨・豪雪の予測可能性に与える影響の定量的評価」(中村尚・代表、平成28-31年度)の連携研究者です。↩