毎月月末は過去1ヶ月の予測を検証する予定です。今回は2016年4月29日号の、4月23日から5月21日までの予測を検証します。
図1上段は、4月23日から予測した5月21日の黒潮の状態です。4月29日号では、接岸傾向mが伊豆諸島に近づく5月中旬頃から、黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路が減衰すると予測していました。しかし、実際には、接岸傾向mが伊豆諸島に近づくことは良く予測出来ていたものの、離岸流路は続いています(図1下段)。接岸傾向mは過大評価で、それに先立ち離岸流路を大きく発達させた離岸傾向lは過小評価していたようです。5月21日の実際の様子については図2の「ひまわり8号」による海面水温画像(※1)も参照してください。
図3は2016年4月23日から5月21日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。
図3: 2016年4月23日から5月21日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。
4月29日号のもう一つの予測は、沿岸での黒潮の離岸・接岸が小刻みなものになっていくというものでした。四国沖には、黒潮牧場ブイと呼ばれるブイ(位置は図2を参照)で流速が観測されているので、そのデータも確認して見ましょう(※2)。図4は、四国・足摺岬沖に位置する黒潮牧場13号ブイ(図左)と、四国・室戸岬沖に位置する10号ブイ(図右)で測られた海面近くの海流の4月23日から5月26日までの1日毎の時間変化です。縦軸が日付になっており、矢印は、方向が流れの向き、長さが流れの強さになっています。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向きを意味しています。黒潮が接岸→流速大、黒潮が離岸→流速小という関係があります。接岸・離岸の変化は上流から下流に移動する性質があるので、流速の増減も上流(足摺岬沖・13号ブイ)から下流(室戸岬沖・10号ブイ)の順に変化します。
図4を見ると、離岸傾向pは比較的大きな離岸で、まず足摺岬(13号ブイ)、次に室戸岬(10号ブイ)で流速が大きく減少しています。その後は接岸傾向と離岸傾向の波が次々に通過して、比較的小さな流速変化が起こっています。予測どおり黒潮の離岸・接岸が小刻みなものになったようです。
5月12日頃の黒潮の足摺岬への接岸(接岸傾向s)の様子は、2016/5/20号「気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮(2)黒潮反流、クロロフィル」で見ています。
比較的大きな離岸傾向pは室戸岬通過後、紀伊半島・潮岬でも離岸を引き起こしています。潮岬での離岸・接岸の指標である串本・浦神水位差の時間変化を見ると、離岸傾向pの影響である水位差の急落(図5中、青矢印)があらわれています(串本・浦神水位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」参照)。それ以前には接岸傾向oの影響である水位差の上昇(図5中、赤矢印)も見えています。
※1 「ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。
気象庁も「ひまわり8号」海面水温画像の公開を開始しています。気象庁「静止気象衛星ひまわり8号による海面水温画像の公開について」(2016/5/24)
※2 過去の黒潮牧場ブイのデータを使った解説一覧はこちら。