2019年6月の予測を検証します

毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。予測通り、黒潮大蛇行が続いています。

予測と実際(長期予測)

今回は5月29日号の、5月23日から予測した6月20日までの結果を検証します。5月29日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1左は、5月23日から予測した6月20日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる6月20日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、5月23日から6月20日までのアニメーションにしたものです。

6月20日の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。伊豆諸島付近では八丈島の北を流れる流路が続くと予測しており、それも当たっていました。ただ、大蛇行をつくる反時計回りの渦(冷水渦)は、予測よりもやや歪んだ形になってきています。

5月29日号の予測では、九州南東で離岸(小蛇行)が発達すると予測していました。5月29日号の予測で書いた通り、予測は過大すぎる傾向がありますが、実際に小蛇行が発達しました(図2のアニメーション参照)。

Fig1

図1: [左]5月23日から予測した6月20日の予測値。[右]観測値を取り入れて推測した6月20日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。

 


図2: 5月23日から6月20日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、5月29日号の5月23日からの予測による冷水面積の変化です。6月になっての減少を予測していました。実際(黒線)に、やや減少しています。

黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約1年11か月[2]たっており、記録が確かな1960年代後半以降では、史上3番目の長さの黒潮大蛇行になっています(「黒潮大蛇行が過去3番目の長さに」)今回より長い大蛇行は30年以上前の1981-1984年(約2年7か月)までさかのぼります。

Fig2

図3: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列で黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した実際の値(解析値)。点線が5月23日から6月20日までの予測。参考のために前回の大蛇行が終了した2005年の時の時間変化を薄い線で重ねた。

予測と実際(短期予測)

今回は先週の6月17日から予測した6月22日の予測を検証します。図4上段は、6月17日から予測した6月22日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる6月22日の状態です。

目立つところでは、大蛇行から北に向かう黒潮の流れが予測では西に寄りすぎていました。

Fig4

図4: [上段]6月17日から予測した6月22日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した6月22日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。青は八丈島の位置。

 

  1. [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。
  2. [2]今までの記事では2017年8月末から1年10か月のように数えてきましたが、今後は2017年8月も含めて1年11か月と数えます。気象庁に合わせた数え方です。