黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約1年11か月[1]になりました。黒潮大蛇行は続くと考えられますが、大蛇行から渦がちぎれる可能性があります。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(2週間先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは8月22日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1・2は7月22日・8月22日の予測です。
東海沖の典型的な黒潮大蛇行が続いています。黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約1年11か月[1]になりました。記録が確かな1960年代後半以降では、史上3番目の長さの黒潮大蛇行になっています(「黒潮大蛇行が過去3番目の長さに」)。今回より長い大蛇行は30年以上前の1981-1984年(約2年7か月)までさかのぼります。
典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい、(2)紀伊半島・潮岬での離岸、(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。
蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[2]。流れを見ると、北緯32度を越えて黒潮が大きく蛇行しています(A)。予測では、大きな蛇行はまだ続きますが(図1)、今回の予測では大蛇行から反時計回りの渦がちぎれる可能性がでてきました(図2)。まだ先の予測なので実際にちぎれるか、ちぎれてもどれくらいの大きさになるか不確実です。もしちぎれる渦が大規模な場合、黒潮大蛇行の継続が影響を受ける可能性があります。
黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[3]。予測でも潮岬での離岸は継続すると予測しています。
黒潮は八丈島の北を流れています(C)[4]。今後も八丈島の北を通過する流路が続くと予測しています。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動すれば、黒潮大蛇行が終わりに向かうことも考えられますが、そのような気配はありません[5]。
九州南東に離岸(小蛇行 D)があり、東進すると予測しています。小蛇行の移動によっては黒潮の流路に影響を与える可能性がありますが、今月の予測検証で見られるように、長期予測モデルは小蛇行を過大に予測する傾向があります。
図3は、6月20日から8月22日までの予測をアニメーションにしたものです。
黒潮の現状と短期の予測については黒潮短期予測をご覧ください。
図3: 2019年6月20日から8月22日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図4は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[6]。黒太線が現在の推定値で、1月からほぼ横ばいが続いていましたが、やや下降しています。最新の予測(赤線)では、図2のような渦のちぎれの影響を受けて8月に急落するという予測になっています。実際に渦がちぎれるかはまだ不確実ですが、注目されます。
- [1]今までの記事では2017年8月末から1年10か月のように数えてきましたが、今後は2017年8月も含めて1年11か月と数えます。気象庁に合わせた数え方です。↩
- [2]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [3]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [4]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、八丈島の潮位が高くなっており、黒潮が八丈島の北を通過していることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [5]「黒潮大蛇行はまだまた続く!? (2019年春の状況)」もご覧ください。↩
- [6]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。