2019年12月22日までの黒潮「長期」予測(10月23日発表)

黒潮大蛇行は、典型的な黒潮大蛇行流路になっており、まだ継続すると予測しています。

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは12月22日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。

予測

図1は10月18日の状態の推測値、図2・3は11月22日・12月22日の予測です。

黒潮は典型的な黒潮大蛇行流路になっています。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。

蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[1]。流れを見ると、北緯32度を越えて黒潮が大きく蛇行しています(A)。予測でも大きな蛇行がまだ続きます。

黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[2]。予測でも潮岬での離岸は継続すると予測しています。

黒潮は八丈島の北を通過する流路が続くと予測しています[3]。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動すれば、黒潮大蛇行が終わりに向かうことも考えられますが、いまのところ予測されていません。

先週に引き続き、大蛇行から渦がちぎれる予測になっています(図2,、A’)、先週の予測に比べれば弱くなっています。

九州の南東に存在する小さな蛇行(図1, D)が東に進んで大蛇行に合流し(図2)、12月には別の小さい蛇行を予測していますが(図3, D’)、いずれにせよ大蛇行に大きな影響はなさそうです。

図4は、10月18日から12月22日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: 2019年10月18日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2019年11月22日の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2019年12月22日の予測値。

 


図4: 2019年10月18日から12月22日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ

図5は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[4]。黒太線が現在の推定値で、8月になってから弱くなりましたが、9月に入ってからは強さを回復しています。先週からも上昇しています。最新の予測(赤線)では、さらに強化された後、弱化する予測になっていますが、まだ十分に高い値が保たれそうです。

Fig5

図5: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(東海沖水深1000mで水温3℃以下の海域の面積)の1日ごとの時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測で、青線が一つ前、黒点線が2つ前の予測(先週の予測)。


  1. [1]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  2. [2]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  3. [3]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い値を保っており、黒潮が八丈島の北を流れていることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。
  4. [4]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。