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JAMSTEC探訪

大量絶滅から日本海の謎まで――コア試料に刻まれた地球史 ~地球科学史を保管する研究所!<後編>

コア試料から発見された微生物の謎!

たとえば日本近海には大量のメタンハイドレードが埋蔵されていると考えられていますが、あれは微生物が作ったメタンなどが集まって固まったもの。そのメタンハイドレードが環境変動によって溶け出たり隠れたりすることで、地球環境に影響を与えています。その気温変化などがこんどは地下の生物に影響を与え、その活動がまた地表の環境に影響を与える。そういうフィードバックの繰り返しによる気候変動を研究している人もいます。

コアから見つかった微生物(メタン菌)/写真提供:JAMSTEC

そういった研究は、コア試料の掘削技術、分析技術が進歩したおかげで可能になった比較的新しい分野だと言えるでしょう。50年前は、コア試料を取ってきても、そこに生きた微生物がいるとは誰も想像していませんでしたからね。でも考えてみれば、地球の7割は海底。地表よりも圧倒的に多いので、地球環境全体を知るにはそれを無視して考えることはできません。そういう発想は、わりと最近になって出てきたものです。

生物が暮らす限界はどこにあるのか?

――海底下の地下世界で生きる生物がいるんですね。当然、海底下ですので、高温だったり、高圧だったりする世界だと思います。

2016年の室戸沖限界生命掘削調査「Tリミット」という研究航海では、海底下に暮らす生物がどのくらいの温度の地層まで生息しているのか? という調査が行われました。

その結果、「100度以上になってもまだ地層の中で生物は生息している」という驚くべき発見があったんです。これからも、未知の微生物が発見される可能性もまだまだあります。また、そのような微生物がどんな形で生きているのかも想像がつきません。それは、生命の定義そのものが変わるような大発見になる可能性もあります。

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室戸沖限界生命掘削調査(T-リミット)解説動画。/提供:JAMSTEC、出典:https://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/exp370/

海底下という未知の世界に挑む!

――地球科学という分野には大きなフロンティアが広がっていることがよくわかりました。コア掘削が担う役割もますます大きくなっていくと思います。

海洋科学掘削をもとにした研究は、今後も国際的な協力のもとで行われ、ここから得られたさまざまな知見は、地球科学はもちろん、気候学や生命科学など、さまざまな分野の研究に役立つものだと考えています。

撮影:市谷明美・講談社写真部

取材・文:岡田仁志
イラストレーション:鈴木知哉
撮影:市谷明美・講談社写真部

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