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海と地球の“深”知識

海に流されたプラスチックは、99%が行方不明。

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中嶋亮太

JAMSTEC 地球環境部門
海洋プラスチック動態研究グループ グループリーダー

海へ流されたプラスチック、どこへ行った?

正しく廃棄されず、海へと流れ出てしまったプラスチック。その総量は、現在およそ1億5000万トンと推定されています。さらに、広い外洋に浮かぶプラスチックはおよそ4500万トン。しかし、実際に表層の調査で把握されているプラスチックの総量は、およそ40~50万トン。予測される総量のうち、たった1パーセントしか見つかっていません。
では、行方不明になったプラスチックはいったいどこへ行ったのでしょう?

海には、流れてきたごみが溜まりやすい場所があり、「ごみパッチ」と呼ばれています。もっとも巨大なごみパッチのひとつは、アメリカの西側の沖にあります。これは、海流が大きく渦巻いているためです。海の表面に浮かぶプラスチックは、やがて深海に沈んでいくと考えられています。そのため、行方不明のプラスチックの多くは、ごみパッチの下の海底に溜まっていると予想されます。

太平洋の「ごみパッチ」の図
国境を越えて海洋プラスチックが集まる「ごみパッチ」

日本の近海でも、海流が大きく渦を巻く場所があります。 JAMSTECでは、黒潮の流れから海洋プラスチックの行方を予測。房総半島の沖にあるポイントに狙いを定め、「しんかい6500」で実際に潜って調査をしました。その水深5700~5800mの海底には予想通り、ビニール袋をはじめとした、大量の海洋プラスチックごみが沈んでいました。

黒潮続流・再循環域の図
海流が大きく渦を巻いている場所の深海底にごみが溜まっていると予測しました。 黒潮続流・再循環域といいます。
(JAMSTECアプリケーションラボ/海洋大循環モデルOFESより)

調査によると、この海流が渦巻く場所の海底には、およそ8万6000トンもの海洋プラスチックごみが沈んでいると予測されています。しかし、行方不明の海洋プラスチックはまだ大量にあり、深海底にはまだ見つかっていないごみ溜まりがたくさんあるはずです。

深海では、ごみがそのまま保存され続ける。

深海は紫外線も届かず、水温も低いため、プラスチックごみがそのままの形で残り続けています。35年前に沈んだ食品のパッケージも、色あせることなく海底に落ちていました。

深海に沈んでいるごみを回収するしんかい6500
35年前に沈んだ食品包装袋。印刷は非常に鮮明で、ほぼ無傷。「昭和59年」という製造年月日がはっきりと残っていました。

今回調査をしたごみ溜まりのような場所が、世界中の深海にあると考えられています。今後、そうした場所を調査していくことで、行方不明のプラスチックごみの隠れ場を明らかにしていくとともに、プラスチックが生態系に与える影響を明らかにしていきたいと思います。

ここが深知識!

海洋プラスチックごみは海流にのって漂い、やがて深海底に沈み溜まっていく。
海流を読み、ごみ溜まりを⾒つけることが、海洋プラスチック問題解決への第⼀歩。

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