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海と地球の“深”知識

石油(と同等の物質)を、体内でつくる生物がいる。

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原田 尚美

JAMSTEC 地球環境部門 部門長
生物地球化学者として活動し、2018年には女性として初めて日本の南極地域観測隊の夏隊でリーダーを務めた。200人以上のスタッフを抱える部門のリーダーとして、極域の環境変動と気候変動などの問題に取り組む。

それは、北極海で発見した世界初の光合成生物。

私たちが使っている石油は、化石燃料と呼ばれるとおり、植物プランクトンなどの生物の死骸が数億年もかけて変化したものだと考えられています。

石油の主成分は炭化水素なので、もし石油と同等の炭化水素を作り出せる生物が見つかれば、石油に替わる高品質のバイオ燃料やバイオプラスチックの原料になると期待され、研究されてきました。

私たちJAMSTECは、北極海の研究航海で「ディクラテリア・ルトゥンダ (Dicrateria rotunda) 」というハプト藻の一種(植物プランクトン)を採取。培養して詳しく調べたところ、石油と同等の炭化水素を合成する能力を持つことがわかりました。そうした光合成生物の発見は世界で初めてです。

ハプト藻の一種「ディクラテリア・ルトゥンダ」の写真とCGイメージ
ハプト藻の一種、「Dicrateria rotunda (D. rotunda)」

石油に代わるエネルギー源になり得る!?

普通の植物プランクトンで作られるバイオ燃料は、エタノールくらいのやや効率の低い燃料ですが、ディクラテリアがつくるものははとても効率の高い燃料で、自動車のガソリンや航空機のジェット燃料として利用できます。

また、こういった藻の活動を中心としたバイオ燃料と二酸化炭素の回収・貯留を組み合わせ、カーボンニュートラルなシステムが構築できれば、大気中への二酸化炭素排出を減らすことも期待できます。

バイオ燃料によるカーボンニュートラルと大気中からの二酸化炭素の除去のイメージ図

D. rotunda」が作り出す炭化水素は、“質”は石油と同等ですが、“量”が少ないことが課題。今後は、どうすれば「D. rotunda」がもっとたくさんの炭化水素を合成してくれるのか、実用化につなげるには、専門家との連携が必要です。

北極海には、私たち人類の研究の手がまだ十分に及んでいません。これからのJAMSTECの研究航海などによって、人類の持続的な発展に貢献する新たな生物が見つかる可能性が広がっています。

ここが深知識!

世界で初めて、石油と同等の炭化水素を作り出すことのできる光合成生物を発見。
石油に替わり高品質のバイオ燃料やバイオプラスチックを作れれば、地球温暖化や資源問題の解決につながる。

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