NHKスペシャル「黒潮 ~世界最大 渦巻く不思議の海~」(放送後追記あり)

以下の番組に取材協力しました。ぜひご覧ください。

番組名NHKスペシャル「黒潮 ~世界最大 渦巻く不思議の海~」
放送日時初回放送: 2017年9月17日(日)21:00~21:49
再放送: 2017年9月21日(木, 水曜深夜) 午前1:00~午前1:50
放送局NHK総合
内容日本人の暮らしや文化に影響を与えてきた「黒潮」について最新の研究成果などを交えて紹介します。白鳳丸などの調査航海や地球シミュレータによる海流の予測研究について美山 透 主任研究員(アプリケーションラボ)他が協力しました。
JAMSTEC番組放送のお知らせ
関連サイト番組ホームページ
制作のプロダクション・エイシア

放送後追記

(JAMSTECで行われた研究に限らず紹介しています。内容が多岐にわたるので内容を順次追加しています。 最終更新2017/9/19 16:49)

コンピューターグラフィックス

海洋の渦のコンピュータグラフィックスに、アプリケーションラボで計算しているJCOPE-T-NEDOOFES(1/30度版)からデータを提供しました。日本付近の動画にはJCOPE-T-NEDOのデータ、西太平洋に広い範囲の動画にはOFESが使われています。

「渦は、足摺岬、室戸岬、そして潮岬と、岬にぶつかる毎に、大きく、複雑になっていく。入り組んだ地形の連続が、世界に例のない渦巻く海流を生みだすのだ。」というくだりのグラフィックスには、2004年の黒潮大蛇行発生の時のデータが使われています[1]

黒潮の流量

黒潮の流量はアマゾン川の240本分という表現がありました。黒潮は、観測が難しいことに加えて、川とは違ってここからここまでという境界がなく、流量の推定には幅があります。また、場所や時間によっても大きく変化します。四国沖で約毎秒4000~5000万トンの流量という推定値[2]を使うと、アマゾン川の流量は約毎秒20万トンですから、200~250倍ということになります。

黒潮を作る力

黒潮を生む力は風です。フィリピン付近の緯度で東から西に吹いている貿易風について番組でとりあげられていました。加えて、日本付近の緯度で西から東に吹く偏西風も重要です。黒潮ができるメカニズムについては、2016/8/5で紹介した書籍「海の教科書 波の不思議から海洋大循環まで」で解説されています。黒潮親潮ウォッチでも機会があれば解説したいと思います。

海には直径が数百kmから数キロメートルの大小の多くの渦があり、黒潮の流れに影響します。このうち小さな渦についてはアプリケーションラボの佐々木英治主任研究員による研究があります。[3]

小蛇行

特に黒潮の変動の鍵をにぎる渦として、九州南東岸に渦ができて,小蛇行と呼ばれる現象が発生することがあります。この小蛇行が黒潮下流に移動することで、黒潮の流路を大きく変化させます。条件がそろって小蛇行が特に大きくなると黒潮大蛇行になると考えられています(2017/9/6号「特別レポート 黒潮大蛇行が12年ぶりに発生 —最新の理論で確かめてみると—」参照)。

小蛇行の発達には様々なメカニズムが働いています。北に向かって流れていた黒潮が、屋久島付近の海底地形に挟まれジェット噴射のように東に吹き出し、浅い海から深い海に引き込まれる、というような表現を番組でされていた地形の効果[4]がその一つです。他にも、他の渦との融合や、東シナ海上の冬の季節風の影響[5]などがあります。

黒潮はなぜ豊かなのか?

植物プランクトンが少なく透明度の高く、名前の由来ともなっている青黒い黒潮が、なぜ高い漁業生産を支えているかという問題は、東京大学大気海洋研究所の齊藤宏明教授らが「黒潮パラドックス」と名付け、研究を進めています[6]。また、別のプロジェクトの中では、海山の引きおこす乱流の重要さも明らかになりつつあります[7]

黒潮から親潮へ

黒潮と親潮の間の渦については、2016/7/22号「暴れる黒潮続流」、2016/11/11号「親潮と黒潮の間・混合水域」などで解説しています。

天候への影響

黒潮が天候に与える影響については、黒潮親潮ウォッチでこれまでも解説しています。書籍としては、2016/6/3号で紹介した「天気と海の関係についてわかっていることいないこと」がまとまっています。

黒潮と爆弾低気圧の関係については、2017/3/1号「黒潮が爆弾低気圧を呼ぶ」で紹介しました。九州大学の川村隆一研究室は「爆弾低気圧情報データベース」を提供しています。

過去の黒潮大蛇行

白鳳丸で2016年に行われた黒潮大蛇行変遷史の解明を目指した航海については、高知大学のプレスリリースをご参照ください。


過去の取材協力一覧はこちら


 


  1. [1]2004年の黒潮大蛇行の発生の様子については、2017/6/21号「2004年の黒潮大蛇行と今年(2017年)の比較」を参照。
  2. [2]出典は「海の教科書 波の不思議から海洋大循環まで」。ただし、この本では重量表記ではなく、体積表記で40から50スベルドラップ(1スベルドラップは毎秒100万立方メートル)と記されています。
  3. [3] 参考資料
    1. 北西太平洋の微小な渦が海洋循環へ与える影響を解明 ~「地球シミュレータ」による高解像度シミュレーションの結果から~ (JAMSTEC プレスリリース)
    2. 小さな渦の動きを解明!海の中の熱や物質を運ぶ働きに影響大!(JAMSTECジュニア向け解説)
    3. 研究成果:微小な海洋渦が中規模渦などの大きな現象に及ぼす影響(科研費「気候系のHOT SPOT」サイト内解説)
  4. [4]その際に働く地球の回転の効果などは省いた簡略化した説明です。
  5. [5]鹿児島大学の中村啓彦教授は、この小蛇行の研究で、2017年度日本海洋学会日高論文賞を受賞されており、ホットなトピックです。
  6. [6]参考資料
    1. 黒潮の恵み:生物生産メカニズムとそのより良い利用に向けて(齊藤宏明教授 2016年度第5回学融合セミナー)
    2. プロジェクト研究「黒潮生態系変動研究」
    3. 北部薩南海域観測~黒潮パラドックス解明に向けて(鹿児島大学産学部 小針統准教授)
  7. [7]参考資料
    OMIXプロジェクト: 黒潮の中の乱流混合ホットスポット-黒潮域の豊かな生物生産を支える仕組みの解明に期待- (九州大学)
美山 透
海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。