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研究者コラム

[続報2]今夏、エルニーニョ現象による異常気象が発生か?―今年は北西太平洋で台風が活発に?―

記事

情報地球科学研究部門 アプリケーションラボ
極端気候・海洋デジタルツイン研究開発グループ

※このコラムは、2026年1月23日に掲載した研究コラム2026年4月17日に掲載した研究コラムの続編です。

2026年4月17日時点の予測どおり、熱帯太平洋は、現在ほぼエルニーニョ状態となっています。
今回のコラムでは台風に注目します。現時点では、2026年の台風の発生数は5(気象庁データ)で、これは平年(気象庁の平年データ)に比べて約2倍多くなっています。では、今夏、北西太平洋で台風活動は活発化するのでしょうか?
スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を使って、アプリケーションラボのSINTEX-F予測システム(注1)で今年の夏の熱帯低気圧の存在頻度(注2)を予測したところ、日本の南にあたる北西太平洋では、熱帯低気圧の活動が平年よりも活発化することが予測されました(図1上)。また、アプリケーションラボで開発している別の大気海洋結合モデルCFES(注3)を使った季節予測システムでも同様の予測がなされています(図1下)。予測の信頼性を高めるため、特性の異なる複数の数値モデルにより予測を行うマルチモデル予測が有効であることが知られています。
北西太平洋の熱帯低気圧の活動は、エルニーニョ現象の影響を受けることが知られています。しかし、エルニーニョ現象と言っても、イベント毎に規模や形状には多様性があり、一括りにして説明するのが難しい部分もあります(注4)。また、熱帯太平洋以外からの影響も受けます。例えば、台風活動が記録的に活発だった2018年には、亜熱帯中部太平洋が平年より暖かいこと (2019年11月5日既報)や、正のインド洋ダイポールモード現象(2025年4月3日既報) が重要な役割を果たしたといった研究もあります。アプリケーションラボの最新の予測でも、2026年の夏は、強いエルニーニョ現象に加えて、亜熱帯中部太平洋が平年より暖かく、正のインド洋ダイポールモード現象が発生することが予測されています。今後も熱帯、亜熱帯の海の状況から目が離せません(注5)。

図
図1: 5月初旬時点で、予測した夏(6-8月)の熱帯低気圧(台風を含む)の存在頻度(注2)の予測。寒(暖)色が平年より存在頻度が減る(増える)ことを示している。上がSINTEX-Fモデルの結果。下が同様の図をCFESモデルで書いた図。両者とも、日本の南、北西太平洋で熱帯低気圧の活動度が高いことを予測している。

注1:世界の季節予測システムのほとんどが数10程度のアンサンブルメンバー(僅かに異なる条件の下で同じ予測計算を繰り返した、それぞれの結果)で予測を実施しているのに対し、SINTEX-F季節予測システムは108に達する大規模アンサンブルメンバー数で予測シミュレーションをしており、予測のバラツキ(ノイズ)が大きい熱帯低気圧の予測についても、シグナルの検出や予測の要因分析をしやすいといったアドバンテージがあります。詳細は、2025年4月3日プレスリリース「沖縄・台湾付近で、夏に熱帯低気圧が増えるかを数ヶ月前から予測可能に! ―インド洋ダイポールモード現象の予測が鍵―」を参照してください。

注2:水平5度格子に、6時間毎に熱帯低気圧が存在している頻度(個数)を6-8月間で積算した値です。ここでは熱帯低気圧の活動が活発かどうかの指標として使いました。

注3:大気海洋結合モデルCFES (Coupled atmosphere–ocean GCM for the Earth Simulator; Komori et al., 2008) を用い、海面水温を観測値へ強く緩和して初期値化を行う実験的季節予測システムCFES ESPreSSO (Experimental Seasonal Prediction System using Surface Observation)です 。詳細はOgata et al. 2024を参照してください。アンサンブルメンバーは12です。雲の取り扱い(積雲対流スキーム)の改良や水平解像度を細かくすることで、CFESでの台風の再現性を向上させる研究をしています(詳細はBaba, Y., 2019Ogata et al. 2025)

注4:アプリケーションラボでは、エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の事例毎の多様性に着目し、典型的なエルニーニョ現象やラニーニャ現象とは似て非なるエルニーニョモドキ現象、ラニーニャモドキ現象を見出し、国際的に研究を推進してきました。

注5:台風の活動度は、海面の水温だけでなく、深度0-300m程度の海中の水温の影響も受けると言われています。海面の水温は人工衛星から観測できますが、時時刻刻と変化する海中の水温をリアルタイムで観測するためには、係留ブイや、アルゴフロートと呼ばれる自動浮き沈み測器などを展開する必要があります。海洋研究開発機構は、海洋観測システムの発展に尽力しています(例えば、【アルゴ2020】アルゴフロートで世界の海を測って20年”JAMSTECにおける熱帯観測網の発展など)

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