ありがとう、「かいれい」
30年間の活動で、さまざまな功績を残した深海調査研究船「かいれい」が退役
わたしは、あなたが残した功績を忘れないよ。
あなたとわたしはいつも一緒に調査へ出かけたね。
マリアナ海溝に行ったときのことを、よく覚えているよ。
1996年、わたしがチャレンジャー海淵の水深1万898mまで潜って、
180種類も微生物が含まれた泥をすくい上げたよね。
1998年には、水深1万900mでカイコウオオソコエビを採った。
こんなに深いところでこの生物を捕まえたのは、世界初だった!
いつも「かいれい」はしっかりと、海上でわたしのことをサポートしてくれたなぁ。
2000年にはインド洋中央海嶺で世界で初めて、
インド洋の水深2450mぐらいだったな。
この発見は、深海で生物がどう広がったのか?とか、
熱水にある鉱物が太平洋や大西洋と同じなのか?って謎を、解き明かしていくヒントになったんだ!
あれは本当に画期的だったなー。
2011年3月14日。この日は東北地方太平洋沖地震の直後で、緊急調査に行ったよね。
わたしたちがこのとき調査したデータと、1999年のデータを比べて、
地震で起きた海底下の変形や、変動の規模が明らかになったんだ。
2013年には、東北地方太平洋沖地震震源海域に行ったなぁ。
地球深部探査船の「ちきゅう」さんが設置した、
長期孔内計測システム(温度計なんかのセンサーのこと!)を一緒に回収しに行ったんだ。
この回収に成功できたから、海溝型巨大地震の解明に貴重なデータを提供できたんだよね。
あとは2016年、拓洋第5海山ってところに行った時のこと。
わたしたちが世界で初めて、水深5,500mの海山斜面でコバルトリッチクラストの存在を見つけて、
試料を持ってくることができたんだ!
わたしとあなたは、本当にいろんな「初めての世界」を見てきたよね。
たくさん面倒を見てくれるあなたの存在は、わたしにとってお母さんみたいだったんだ。
こういうのを“母船”って言うんだって。
これからもわたしの活躍を見守っていてね。
ありがとう、「かいれい」。
無人探査機「かいこう」より