
Hsiung Kan-His(ション カンシー)
海域地震火山部門 地震発生帯研究センター
海底地質・地球物理研究グループ 副主任研究員
台湾出身。2015年からJAMSTECで研究活動を行い、専門は堆積地学です。日本海の琉球海溝、南海トラフ、日本海溝、千島海溝といった深海で採ってきたコア、堆積物研究を進めています。
海溝の海底には、地震・津波がキレイに記録されている。
これからの地震・津波を予測して備えるには、これまで、いつ、どんな地震・津波が起こってきたのかを知ることが必要です。
地震・津波が起こると、海底の地殻変動によって土砂が運ばれて堆積します。「タービダイト」と呼ばれる地震・ 津波の痕跡です。地上や浅い海底のタービダイトは、風雨や海流などの影響を受けて劣化しますが、深い海溝では、そのままキレイに保存されています。そこで私たちは、海溝の海底を掘って、取得した堆積物を分析し、地震・津波の発生履歴を調べる研究を進めています。

地震・津波の年代の特定は「科学×古文書」で。
私たちは、2011年の東日本大震災の後、日本海溝の宮城県沖 水深7000mで、海底下10mまで掘り、約1000年分の堆積物を採取しました。分析の結果、2カ所のタービダイトが見つかりました。
その年代を特定するため、私たちは火山灰や古文書の記録を調べました。2カ所のタービダイトの間に、915年に噴火した十和田火山 の火山灰が見つかり、さらに古文書に記された地震・津波の話もつき合わせると、2カ所のタービダイトは、1454年(室町中期)と869年(平安初期)のものだと推定できました。日本海溝では約500年間隔で巨大地震・巨大津波が繰り返されてきた可能性が高いとわかったのです。

ここが深知識!
日本海溝の海底の堆積物を採取して分析したところ、 1454年と869年の巨大地震・巨大津波とみられる痕跡を確認できた。 今後さらに、海溝を調べることで、過去4000年分の 巨大地震・巨大津波の発生履歴を明らかにできると期待される。