黒潮は(いったん?)接岸流路へ

本解説は、10月23日解説「離岸流路は続くか?」の続編です。この時のJCOPE2予測のシナリオは図1のようなものでした。当時、黒潮の接岸傾向gが東海沖を下流に進んでいました(図1a)。この接岸傾向gが伊豆諸島に近づくにつれて、黒潮が八丈島に近づくことが予想されていました(図1b)。ただし、接岸傾向gは過小評価されている可能性があり、その場合は予想より黒潮が本州に近づき、黒潮が八丈島の北を流れる接岸流路的な状態になる可能性もありました(図1b、赤点線)。いずれにせよ、その後、離岸傾向hが近づくことで、黒潮が八丈島の大きく南を流れる離岸流路が再び発達するという予測でした(図1c)。

Fig1

図1: JCOPE2予測のシナリオ説明図。

 

では、観測を見てみましょう。過去の解説で(※1)、黒潮が離岸流路であるか接岸流路であるかは、八丈島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。それは、流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

図2の上段は、過去の解説でも使用した、東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」から、八丈島での海面高度(潮位)の今年の変化をグラフ作成したものです。10月30日の検証の段階では八丈島の潮位は低いままでしたが、その後、急上昇しています。過去の潮位と比較して、接岸流路になったと判断できる高さです。八丈島の北に位置する三宅島(図2下段)でも少し潮位が上昇していることから、黒潮が三宅島にも近づいていることがうかがえます。

Fig2

図2: 東京大学大気海洋研究所「潮位データを用いた黒潮モニタリング」「各潮位データの図示」から、「期間: 2015年までの 1年間」で、「八丈島」(上段)「三宅島」(下段)でグラフ作成。単位はセンチメートル。矢印と字で注釈を追記した。

 

JCOPE2の予測を確認してみましょう。図3は、JCOPE2の最近4回の八丈島付近の海面高度の予測です。10月23日の解説で使用した10月17日からの予測(黒線)では接岸傾向gを過小評価しており、海面高度上昇を現実に比べてかなり少なめに予測していました(黒★が観測値を取り入れて現実に近いと考えられる推測値)。その後、予測が更新される度に現実の海面高度上昇が取り込まれています。一方で、今後の予測は最新の予測(赤線)でも、再び海面高度が低下、つまり離岸流路が再び発達すると予測しています(今週の予測参照)。つまり図1cのシナリオはまだ変わっていません。実際どうなるか今後注目です。

Fig3

図3: JCOPE2による八丈島付近の海面高度の予測の10月1日以降の時系列(黒線が10月17日、緑線が10月24日から、青線が10月31日から、赤線が11月7日からの予測)。単位はセンチメートル。黒★は11月7日までの観測値を取り入れた推測値。図2が1地点の観測値であるのに対し、図3の値はモデルの分解能の約9km四方の平均であり、0の値の基準点も違うので、図2と図3の値は完全には一致しません。上昇と下降の変化の傾向を主に見て下さい。


 

※1
1月の離岸流路発達と2月末の一時的な変化に関しては3月20日号
5月末の一時的な変化に関しては6月12日号
6-7月の接岸流路への変化に関しては7月10日号
8月の離岸流路への変化に関しては8月14日号8月28日号
で解説しました。


過去の解説一覧はこちら


美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。