水温はやや高めに (親潮ウォッチ2018/9)

水温が平年に比べてやや高めになってきています。強い暖水渦ではありませんが、暖水渦は存在するので予測の難しい状態になっています。

全体的な状況

まず、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2018年8月28日と、9月17日の、海面水温の平年との差を見たものです[1]。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。8月の海面水温については、「海面水温低下(親潮ウォッチ2018/8)」で解説しています。

8月には台風の影響もあり海面温度が平年より低いところが目立っていましたが(上図)、9月現在には再び平年より海面温度が高いところが増えています(下図)。ただ台風21号が通過したところ(経路は下図の赤線)では、9月の初めに通過してからしばらくたちますが、まだ名残で水温がやや低めになっています(下図)。

黒潮大蛇行が現在発生しており(黒潮予測記事参照)、それにともなう冷水渦(図中A)で海面水温が平年より冷たくなっています。その北では東から西へ沿岸沿いに黒潮から暖水が流入しているため、関東から東海沿岸にかけて海面水温が平年より高くなっています(図中B)。

北海道沖から東北沖にかけても、8月は平年より冷たい海域が多かったですが(上図)、天気が良かったこともあり9月現在には再び平年よりやや海面温度が高いところが広がっています(下図、図中C)。

今後の日本周辺の水温については、姉妹サイトの「季節ウォッチ」も参考にしてください。「2018年8月号:今年の秋はどうなる?」には、秋の予測が出ています。

Fig1

図1: 海面温度の平年との差(℃)。[上段]2018年8月28日。[下段] 2018年9月17日。下図の赤線は台風21号の経路。台風の経路のデータはデジタル台風から入手した。

親潮の様子(海面)

親潮周辺の様子を詳しく見ていきます。図2左は、図1下段を親潮域で拡大した図です。図2右は、対応する海面温度そのもの(色)と、流れ(矢印)です。a~dの位置に時計回りの暖水渦が見られます。天気が良く海面水温が平年よりやや高くなっただけでなく、暖水渦がある場所では特に平年より温度が高くなっている様子がうかがえます。

Fig2

図2: [左図] 2018年9月17日の親潮周辺の海面温度の平年との差(℃)。[右図] 同じく2018年9月17日の海面水温(色、℃)と流れ(流線)。

親潮の様子(海面下)

海流の様子をより良くみるために、天気の影響を受けにくい海面下の水深100メートルの様子を見てみましょう(図3左図)。昨年の状況とも比べます(図3右図)。

暖水渦a(図3左)の影響が気になることろですが、昨年(図3右)に比べればまだ親潮は南まで入ってきている状況のようです。昨年の状況については「親潮はそれほど強くない (親潮ウォッチ2017/09)」で解説しています。

Fig3

図3: 水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(流線)。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。[左図]今年の9月17日。[右図] 1年前(2017年)の9月17日。

9月17日からの予測

図4は、JCOPE2Mで9月17日から予測した9月26日の親潮域の水深100mの水温・流れ(左図)と、平年[2](右図)を比較しています。水温5度の等値線が親潮の勢力の指標になっています。図4の渦aの動き次第で親潮の南下が変わってきそうです(図6左)。現在のところ予測では、平年の親潮第一分枝(①, 図4右)と同じくらいかやや弱めになりそうです。第二分枝(②)はかなり弱くなるでしょう[3]

図5は、図4に対応する9月17日から11月22日までの予測をアニメーションにしたものです。

渦の動きの予測は難しいので、今後予測が変わる可能性があります。最新の予測は週2回更新されるJCOPE のサイトでチェックしてください。

Fig4

図4: JCOPE2Mで2018年9月17日から予測した9月26日の親潮域の水深100mでの水温(色、℃)と流れ(流線)の図(左図)と、平年(右図)の比較。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。

 


図5: 親潮域の水深100mでの2018年9月17日から11月22日までの水温のJCOPE2Mによる水温(色、℃)と流れ(流線)の予測(左図)と、平年(右図)の比較のアニメーション。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

親潮面積

JCOPE2Mによる推定によれば(図6青太線)、親潮の勢力の指標である親潮面積(図3の青枠での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)[4]は、親潮の第二分枝が弱いことから、平年(黒細線)よりかなり小さな値が続いています。予測(赤点線)でも小さい値が続きます。

 

Fig6

図6: 親潮面積の時系列(単位104 km2)。青線が2017年1月から現在までのJCOPE2Mから計算した時系列。黒細線はJCOPE2M再解析による平年(1993-2016年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。赤点線は2018年9月17日からのJCOPE2Mによる予測。

 

関連情報

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2016年の平均を使っています。
  2. [2]1993から2016年の平均。
  3. [3]親潮第一分枝・第二分枝については「親潮はどんな流路になっているの?(親潮ウォッチ2015/7)」の解説参照。
  4. [4]親潮面積については、「親潮が記録的なあたたかさ(親潮ウォッチ2015/9)」で解説しています。

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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。