5月21日から6月18日の予測を検証します

毎月月末は過去1ヶ月の予測を検証する予定です。今回は2016年5月27日号の、5月21日から6月18日までの予測を検証します。

図1上段は、5月21日から予測した6月18日の黒潮の状態です。5月27日号では、黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路が6月中は続くと予測していました。予測どおり、離岸流路が継続しています。その他の点でも、九州東岸での接岸・離岸(接岸傾向u, 離岸傾向v)を除けば、よく予測出来ていました。東海沖の暖水渦も、実際よりやや弱いものの、予測できていました。6月18日の実際の様子については図2の「ひまわり8号」による海面水温画像(※1)も参照してください。

図3は2016年5月21日から6月18日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: [上段]2016年5月21日から予測した6月18日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した6月18日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。アルファベットk,l,..は接岸・離岸傾向の波(今週号の現状・予測参照)。

Fig2

図2: 「ひまわり8号」が観測した2016年6月18日の一日平均海面水温(°C)。JAXA提供の1時間データを合成した。白の空白は雲がかかって観測できなかった所。赤星()は八丈島の位置。青丸()が図4で説明する黒潮牧場10号・13号ブイの位置。

 


図3: 2016年5月21日から6月18日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。

kurokatsu

5月27日号では、黒潮が八丈島の北を流れる接岸流路へ7月に向かう可能性を予測していました。その予測は、今週号でも継続です(ただし接岸流路になるのは一時的)。

5月27日号のもう一つの予測は、沿岸での黒潮の離岸・接岸がしだいに大規模なっていくというものでした。特に、接岸傾向s離岸傾向tは発達し、7月に一時的な接岸流路へと変化するという今週号の予測で重要な役割を果たしています。四国から紀伊半島沿岸での接岸傾向s離岸傾向tの動きを、観測から確認してみましょう。

図4は、四国・足摺岬沖に位置する黒潮牧場13号ブイ(図左)と、四国・室戸岬沖に位置する10号ブイ(図右)で測られた海面近くの海流の5月21日から6月23日までの1日毎の時間変化です。縦軸が日付になっており、矢印は、方向が流れの向き、長さが流れの強さになっています。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向きを意味しています。黒潮が接岸→流速大黒潮が離岸→流速小という関係があります。接岸・離岸の変化は上流から下流に移動する性質があるので、流速の増減も上流(足摺岬沖・13号ブイ)から下流(室戸岬沖・10号ブイ)の順に変化します。

図4を見ると、接岸傾向sは、足摺岬(13号ブイ)、ついで室戸岬(10号ブイ)の流速増大として見えています。離岸傾向tは、5月末から6月初期の足摺岬(13号ブイ)、ついで現在の室戸岬(10号ブイ)の流速減少として見えています。

接岸・離岸は下流に移動し、紀伊半島・潮岬でも接岸・離岸を引き起こしています。図5は、潮岬での離岸・接岸の指標である串本・浦神水位差の時間変化です(串本・浦神水位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」参照)。黒潮が接岸→水位差大黒潮が離岸→水位差小という関係があります。

図5を見ると、接岸傾向sの影響は離岸傾向rの後の6月上旬の水位上昇、離岸傾向tの影響は現在の水位減少としてあらわれています。

接岸傾向s離岸傾向tが、これから発達しながら下流に移動し、今週号の予測どおり一時的な接岸傾向への移行を引き起こすか注目です。

Fig4

図4: 足摺岬沖黒潮牧場13号(左)と10号ブイ(右)で観測された表層流速の1日毎の時間変化(2016年5月21日から6月23日)。単位はノット。矢印は、方向が流れの向き、長さが流れの強さ。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向き。データは高知県漁海況情報システムから入手した。

 

Fig5

図5: 串本・浦神潮位差(日平均)の時系列(5月21日から6月22日)。データは気象庁から入手した。

 

 

※1 「ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら

※2 過去の黒潮牧場ブイのデータを使った解説一覧はこちら